全国高校ラグビー大会で4強入りした東福岡(福岡)の元キャプテンで、高校日本代表にも選ばれたCTB廣瀬雄也がこの春、明大ラグビー部に入部する。4月に右肩を脱臼骨折し、約半年間、戦線離脱。それを機に、家族ぐるみで食事改善に取り組んだ。明大の恵まれた環境でさらなるレベルアップを目指す廣瀬と、支えた母道子さんにその工夫を聞いた。
父は元トップリーガーの高校日本代表
廣瀬は生まれた時からラグビーに触れてきた。父友幸さんは、トップリーグの宗像サニックスの前身、福岡サニックスの元選手で、道子さんは宗像サニックスのサブマネジャー。両親の影響を受けてラグビーに親しみ、高2でU17日本代表に選出され、全国高校ラグビーには2度出場した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったが、プレースキッカーも務める高校屈指のセンターとして、3月には高校日本代表のウェールズ遠征に参加する予定だった。
リハビリ中の定番メニューは野菜鍋
そんな廣瀬が食事の大切さを再確認したのは昨年4月、試合中のトライで右肩を脱臼骨折し、全治7カ月の大ケガを負ったことからで、まさに「ケガの功名」と言える。11月の花園予選に間に合うかどうか分からない、初めての挫折。「仕方ないと思いつつも、ショックと悔しさで落ち込みました」と廣瀬は当時を語る。
長いギプス生活では運動量が限られるため、リハビリの間は脂質控えめのタンパク質、野菜中心の食事に切り替わった。メニューの定番となったのが野菜たっぷりの「鍋」だ。「豚しゃぶとか、簡単なものなんですけれどね。淡色野菜だけでなく、ホウレン草やニンジン、春菊などの緑黄色野菜も摂れるようにしていました」(道子さん)。
油みそと特製ふりかけが大活躍
食欲が落ちたときは、道子さんが幼少時代に口にしていた2種類の「ご飯のお供」が大活躍した。「豚ひき肉、砂糖、ニラの入った『油みそ』と、ヒジキ、じゃこ、塩昆布、ゴマ、かつおぶしを混ぜた『ふりかけ』。簡単なものですが、ご飯が進むんです」。廣瀬も「めちゃウマイ」と絶賛する廣瀬家の味で、箸が進んだ。
実業団のソフトボール選手として国体でも活躍した道子さんは、自身の経験を思い出しながら「家では今まで通り振る舞うようにした」という。友幸さんは息子と入浴を共にし、プレーヤーとしての不安や本音に耳を傾けてきた。家族による「元アスリート」としての冷静な振る舞いも、廣瀬の精神的な支えとなった。
廣瀬は予定よりも早い10月下旬の福岡県大会(花園予選)で実戦に復帰。主将としてチームを統率し、20年連続30度目の本大会出場権を獲得した。全国大会では準決勝で、優勝した桐蔭学園(神奈川)に敗れ、3年ぶりの王座奪回とはならなかったが、7年連続4強入りで名門の意地を見せた。
学んだ自己管理を次のステージでも
「共働きで忙しい中、朝早く起きて栄養バランスを考えた弁当や食事を毎日作ってくれた。そのお陰で、順調に回復し復帰できた。前向きにリハビリに取り組めたのは家族のお陰でした」と廣瀬は両親に感謝する。高校の部活動が終わった後、食事量が減って92キロ(179センチ)から87キロまで体重が落ちたが、3月にはベスト体重の90キロに戻した。次の目標に向けての体作りのために、栄養価の高い食事をとるなどリハビリ期間に身につけた自己管理を継続できたことは、さらに上のステージに挑む自信になったはずだ。
4月、正式に明大ラグビー部での寮生活が始まる。「先輩たちの高いレベルに早く追いつきたい」と言う廣瀬に、道子さんは「ここからは自立。素晴らしい環境の中で、先輩や、新しい仲間と切磋琢磨して心身ともに成長していって欲しい」とエールを送った。【樫本ゆき】