「舌」からプロ野球を盛り上げる。楽天は7日から「選手プロデュース弁当」のデリバリーを仙台市内限定(一部地域を除く)で行っている。

「こばやし」が調理する楽天の選手プロデュース弁当の表紙。上段左から「茂木栄五郎の焼肉弁当」「岸孝之 伊達な弁当」下段左から「浅村栄斗の牛タン弁当」「三木肇監督 豪華絢爛!東北6県まるごと折」「則本昂大のトリプル勝つ重」(撮影・桑原幹久)
「こばやし」が調理する楽天の選手プロデュース弁当の表紙。上段左から「茂木栄五郎の焼肉弁当」「岸孝之 伊達な弁当」下段左から「浅村栄斗の牛タン弁当」「三木肇監督 豪華絢爛!東北6県まるごと折」「則本昂大のトリプル勝つ重」(撮影・桑原幹久)

製造、配達を担うのは、今年で創業100年を誇る弁当会社「こばやし」。小林亜星氏のキャラクターで仙台に根付いている。新型コロナウイルスの影響で苦境に立つ老舗が抱く思いとは-。

「三木肇監督 豪華絢爛!東北6県まるごと折」(税込み1450円) 多彩な戦術の「三木野球」をほうふつとさせる14品目。東北パワー集結。牛タンシチューは大人のコク
「三木肇監督 豪華絢爛!東北6県まるごと折」(税込み1450円) 多彩な戦術の「三木野球」をほうふつとさせる14品目。東北パワー集結。牛タンシチューは大人のコク

3月下旬。楽天からこばやしに連絡が入った。「お弁当のデリバリーをやりませんか?」。球場限定だった販売許可の拡大を申し入れられた。担当者は「ファンの方々に少しでも雰囲気を味わってもらえたら」と受諾。11日から配達を始め、15日現在で約1100食の注文を受けている。

「岸孝之 伊達な弁当」(税込み1150円) 宮城・仙台の味覚が12品。笹(ささ)かまぼこのチーズ焼き、牛タンのバジルオイルソース焼きなど、こってりさっぱりの緩急抜群
「岸孝之 伊達な弁当」(税込み1150円) 宮城・仙台の味覚が12品。笹(ささ)かまぼこのチーズ焼き、牛タンのバジルオイルソース焼きなど、こってりさっぱりの緩急抜群

1920年(大9)創業。球団創設2年目から選手弁当の製造を担う老舗にも“コロナショック”は大打撃だ。開幕前に選手がデザインされた包材を約10万食分発注。4月末までに想定していた約3000万円の売り上げにメドが立たなくなった。

「則本昂大のトリプル勝つ重」(税込み1150円) 分厚く切られたロース、ハム、海老カツの力勝負にきりきり舞い。付け合わせでも箸は止まらず、白飯も止まらず。圧倒的完封勝利
「則本昂大のトリプル勝つ重」(税込み1150円) 分厚く切られたロース、ハム、海老カツの力勝負にきりきり舞い。付け合わせでも箸は止まらず、白飯も止まらず。圧倒的完封勝利

困難は幾度も乗り越えてきた。45年の仙台空襲で本社と工場が全焼も、翌年に営業を再開。2011年3月11日の東日本大震災で被災も、プロパンガス、貯水タンク、発電機などの備えを稼働させ、翌日から再開。自衛隊などへ常温の食材を詰め合わせた「災害用弁当」を卸した。

「浅村栄斗の牛たん弁当」(税込み1250円) 4枚の肉厚牛タンは破壊力十分。フルスイングで幸福感へたどり着く。びっしり敷かれた牛タンそぼろで、つなぎもバッチリ。
「浅村栄斗の牛たん弁当」(税込み1250円) 4枚の肉厚牛タンは破壊力十分。フルスイングで幸福感へたどり着く。びっしり敷かれた牛タンそぼろで、つなぎもバッチリ。

今回は特に厳しい。イベント、学会などは軒並み中止。緊急事態宣言の発令から東京、上野など都心の駅への駅弁注文もなくなった。「震災時と比べても需要がないので、なお厳しい状況です」と担当者は話す。

「茂木栄五郎の焼肉弁当」(税込み1150円)甘い牛しぐれ煮から味噌牛タン、豚ロース焼き肉へと華麗なポジションどり。キノコとアスパラのバターソテーは新主将の大好物
「茂木栄五郎の焼肉弁当」(税込み1150円)甘い牛しぐれ煮から味噌牛タン、豚ロース焼き肉へと華麗なポジションどり。キノコとアスパラのバターソテーは新主将の大好物

ただ、そんな苦境でも、消費者の声は希望の光となっている。注文フォームに設けたコメント欄には「企画してくれてありがとう」「球場には行けないけれど、家族みんなで食べます!」などのメッセージがあふれる。注文は配達日の3日前、5個から受け付け、配達期間はプロ野球開幕前日まで。スタジアムで食べる弁当は本当にうまい。球音と歓声が響くまで、思いを運ぶ。【桑原幹久】

(2020年4月17日、ニッカンスポーツ・コム掲載)