免疫力を高めて、様々な感染症やアレルギー症状の改善効果が期待されるビタミンD。そんな免疫作用の働きを正常化するビタミンDの血中濃度が、新型コロナウイルスの感染や死亡率に関係するとの研究結果が、欧米で次々と発表されている。疫学や神経学を含む老年学の臨床および研究機関Aging Clinical and Experimental Research(エイジング・クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・リサーチ)が発行するジャーナルで報告された。
平均血中濃度と感染率や死亡率を調査
英国のアングリア・ラスキン大学とクイーン・エリザベス病院キングス・リン国民保険サービス信託財団が、欧州20カ国を対象に、国民の平均ビタミンDレベルと新型コロナの感染率や死亡率の関係について調査したところ、ビタミンDの平均血中濃度が低いイタリアとスペインでは重症患者や死者が多く、北欧諸国の人々は、比較的死亡率が低いことが分かった。イタリアやスペインでは高齢者が紫外線を避ける傾向が強く、皮膚の色素沈着が天然のビタミンDの合成を低下させていることも判明。一方で、北欧諸国は太陽の光をよく浴びることで知られ、普段からタラの肝油を食べ、ビタミンDのサプリメントも摂取しているため、平均濃度が高いという。
このことからビタミンDの平均血中濃度と新型コロナの症例に相関性が認められると結論づけている。また、入院患者や介護施設の入所者の75%にビタミンDの欠乏が見られたとし、高齢者が重篤化しやすい要因にもビタミンD不足を挙げている。
免疫システムの暴走をビタミンDが抑える
同様に、米国のノースウエスタン大学の研究チームも、米国や中国、ドイツやイタリアなど世界10カ国を対象に行った研究において、ビタミンDの欠乏と死亡率には因果関係があると発表している。
新型コロナの感染症はウイルスそのものによる肺の損傷ではなく、免疫システムが誤って自分自身を攻撃し、合併症を引き起こすことで重症化させると指摘。ビタミンDは免疫バランスを整えるため、免疫システムが過剰反応し、暴走して起こる炎症「サイトカインストーム」を抑え、重症化の確率を下げることが期待できるとしている。
ビタミンDは、紫外線に直接当たることによって皮膚で産生させるほか、卵黄やサケ、サンマ、イワシなど青魚や赤身の肉、レバー、キノコ類などからも取ることができる。免疫力を高めるとしてビタミンDだけ摂取しても効果はないが、毎日の食卓にビタミンDを多く含むものを意識して取り入れるといいだろう。特に、巣ごもり生活で日光に当たる機会が少ない今、食事内容を見直してみよう。
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】