ロッテのドラフト1位・佐々木朗希投手(18)が“ケンミンショー”を繰り広げた。23日、球団公式SNS上での「Q&A」企画に回答した。ファンからの質問「関東に来て恋しくなった食べ物は?」への回答は「酢の素」。実はこれ、地元の岩手・大船渡市民が愛する逸品だ。相次ぐ剛腕輩出に加え、コロナ禍でも注目のテーマ“なぜ岩手?”。ゴールデンルーキーがまた1つ、岩手県の知られざるエネルギーを世に発信した。
岩手県民歴18年の佐々木朗は、意外にもわんこそばや盛岡冷麺を食べたことがなかった。何より好きなのは「お店のものが食べられないくらいおいしい」という母陽子さん手作りのハンバーグだ。上京から5カ月。母の味に迫るほど恋しい、ソウルフードがある。
「酢の素という、大船渡のしょうゆ店で造られたお酢があるのですが…」。
163キロ右腕による、スローカーブのような答え。「とっても酸っぱいです。1度これに慣れたら、普通の酢は物足りない。カニを酢につけて食べたりしていました」と、強い思い入れを明かした。
全国的には超無名の“逸材”だ。明治創業の水野醤油店が、約40年前に酢の醸造を始めた。ボトルに「濃厚」と書かれたあめ色の酢は、本来は約4倍に希釈して使うもの。同店4代目の水野一也さん(56)は「大船渡の人たちは原液で使うんです」と笑う。佐々木家でも常備されてきた。
強烈な酸味に慣れ親しむ市民は「初めて食べる人はむせる」と声をそろえる。製法は門外不出で、販路も限られる。隣接の陸前高田市内でさえ、認知度はそう高くない。ネット注文のシステムも設けていない中で、口コミだけで北海道や沖縄からも電話注文が入るという通好みの逸品。だからこそ「朗希君のような若い人が好んでくれているのはうれしい」と水野さんの喜びもひとしおだ。
酢で体が柔らかくなる…は俗説で、163キロを生む柔軟性は日々のストレッチで身につけた。とはいえ、濃厚酢も健やかな肉体の礎となった1つだ。Q&Aでは酢の素に加えて「メン子ちゃんゼリー」というご当地おやつも紹介した。「地元に恩返ししたい」という思いを、シーズン開幕前からフル稼働させている。この日はZOZOマリンで約3時間の練習に励んだ。港町で育まれた刺激的すぎる直球が、再びうなる日も近い。【金子真仁】
○…酢の素は約40年前に「おまけ」から始まった。水野醤油店の4代目・水野一也さん(56)は「お客さんに年末にカレンダーを配ったりするじゃないですか。あんな感じで、作った酢を見本として配り始めたんです」と振り返る。大船渡市内に酢の醸造場が他にないことも重なり、刺激的な新作が大きな支持を得るようになった。種別は合成酢となり、500ミリリットルボトルが420円で販売されている。水野さんは「しょうゆやワサビに飽きた時に、刺し身に原液をかけて食べる人も多いようです。聞いた話ですと、マグロやカツオが真っ白になるのだとか」と他県民には驚きのエピソードも明かした。
〇…ロッテ公式インスタグラム上での佐々木朗「Q&A」企画にはファンから1081件の質問が集まり、54問に回答した。 マリナーズ・イチロー氏を尊敬する人物に挙げ「リスペクトしています。結果ですべてを語る姿がカッコいいです」とあこがれた。190センチの高身長については「目立ちたくないので、どうしても猫背になってしまいます」と意外な一面。「流れ星を見たら何をお願いしますか?」の質問には「世界平和を願おうとずっと思っています」と真剣に答えた。
実家の愛犬の写真も初公開した。「3歳半のトイプードルで、オスのラムちゃん。ボクと誕生日が一緒なんです」。次男・朗希ら3兄弟は皆、イニシャルがR。母陽子さんのこだわりで“四男”にもRを冠し、金魚の名前も「ルビー」。Reiwaの怪物Roukiは、Rに何かと縁がある。
(2020年5月24日、ニッカンスポーツ・コム掲載)