藤井聡太2冠(18)の勝負メシは、栄養学的にも理にかなっていた。

史上最年少2冠を獲得した藤井聡太棋聖は金色の色紙を手に笑顔(撮影・梅根麻紀)
史上最年少2冠を獲得した藤井聡太棋聖は金色の色紙を手に笑顔(撮影・梅根麻紀)

管理栄養士で、元JOC強化スタッフとしてメダリストを支援したり、プロ野球やプロサッカーJリーグなどで、選手をサポートする川端理香さんが、リストを見て驚いた。アスリートの食事は数多く見ているが、文系の将棋棋士は初めて。意外に食べているメニューが多いだけでなく、理想的な栄養の摂取に舌を巻いた。

<棋聖戦>
◇第1局(6/8) カツカレー
◇第2局(6/28) 海鮮天重
◇第3局(7/9) 冷しゃぶサラダ定食
◇第4局(7/16) みそ煮込みうどん

<王位戦>
◇第1局第1日(7/1) 三河鮮魚の海鮮丼
◇第1局第2日(7/2) 冷やしきしめん御膳
◇第2局第1日(7/13) 中華セットランチ
◇第2局第2日(7/14) ビーフステーキカレーセットランチ
◇第3局第1日(8/4) 神戸牛すき鍋御膳
◇第3局第2日(8/5) 肉うどん膳
◇第4局第1日(8/19) 玄海産車海老と九州産野菜の天丼と冷やし能古うどんのセット
◇第4局第2日(8/20) 福岡産高菜ピラフ

「栄養素について知ってか知らずか、炭水化物とタンパク質の選び方が上手で、うまく組み合わせた食べ方をしています」。藤井2冠が6~7月の対局時に食べた昼食について、川端さんがこう解説した。「知識がなくても、理にかなった食事を取るアスリートはいます。それと同じ。勝負師の本能なのではないでしょうか?」と、補足した。主食のごはんと、豚肉や豆腐、卵などを併せることで、うまくエネルギーを使えるようにしているという。

タイトル戦をはじめ、対局時の昼食で着目したのは、麺類が好きでうどんをよく食べること。実は米よりうどんの方が血糖値は緩やかに上がっていく。血糖値は急激に上げると、急激に下がりやすくなる。急降下状態になると眠気に襲われる。これでは、盤上で最高のパフォーマンスが発揮できない。「頭のさえた状態で、午前中の序盤から午後の難しい局面を迎えられる。いつもの状態で対局に臨めるエネルギーの使い方です」(川端さん)。

カレーやチャーハンも、血糖値が上がりにくいという。特にカレーに入っているターメリックは、抗酸化作用がある上、血流を良くする働きがある。「栄養素の運びが良くなり、栄養の代謝を助けます」。

勝負メシの選択は、私たちにも当てはまる。それでは、本番(対局)の前後の食事はどうすればいいのか? 川端さんはこうアドバイスしてくれた。

前日
脳の伝達物質や脳細胞自体を作る栄養素を多めに。DHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含むカツオやアジなどの生魚は、気持ちの安定と脳のエネルギー貯蔵に役立ちます。ほかにも、サバのみそ煮とか、サケやウナギなどを主菜に、糖質系の主食と併せるといいでしょう。

一方、対局を終えると、棋士によっては体重が2~3キロ減るという。それだけエネルギーが消費される。

対局後
疲労回復も兼ね、主食+酸味のメニューで消費したエネルギーを蓄えやすくします。ごはんを酢飯にするだけでも結構。ギョーザに酢をかけて食べるとか、梅干しをほかの食材と組み合わせて使うのもいいでしょう。あとは、酢ダレの冷やし中華。卵やチャーシューが加われば、エネルギーが充電できます。

(2020年8月21日、ニッカンスポーツ・コム掲載)