<コロナ禍を乗り越えて:明大ラグビー部(上)>
明治大学ラグビー部の今季は「悔しさ」からはじまった。1月11日、満員の国立競技場で行われた大学選手権決勝で早大に35-45で敗れ、連覇を阻まれた。前半40分で0-31という想定外の屈辱。「もう切り替えましたが…」と言うNO8箸本龍雅主将(4年)の表情は今でも厳しくなる。
「あの試合に出ていなかった選手にも、あの試合で学んだことを伝えていかなければならない」。
自粛期間はオフではない
今季のチームスローガンは「One by One(一歩ずつ)」。やるべきことを1つずつ…と取り組み始めた矢先のコロナ禍。「分かっていると思うが、この自粛期間はオフではない。各自、いつでもベストな状態でラグビーができるように、食事や生活習慣も、自覚を持って生活してくれ」と箸本主将は伝え、チームは解散した。
選手94人と学生スタッフが生活する世田谷区八幡山の寮に残ったのは、約40人。「当初は3週間ほどだと思っていた」(箸本主将)が、全員が再合流できたのは7月上旬、3カ月以上も先のことだった。
ラグビーをやるために「我慢」
緊急事態宣言の発令期間中、寮生の行動範囲は八幡山周辺のみで外食も禁止された。現在は京王線の八幡山駅を挟んで上下3駅の下高井戸から仙川まで、寮から半径約3キロまで範囲は広げられたが、公共交通機関の利用は禁止。寮食が休みの月曜日は、居酒屋以外での外食が認められているが、滞在時間は極力短くとされ、友だちや外部との接触も禁止という厳しいルールが定められている。
選手の生活面を管理する寮長のLO/FL髙橋広大(4年)は「みんなのストレスはすごい」と打ち明ける。では、どう対処しているのか。箸本主将の答えは「我慢するしかない」と実にシンプルだった。
「ラグビーをやるために、今、ここにいる」。感染者が出たら大好きなラグビーが出来なくなり、あの悔しさを晴らすことができなくなってしまう。誇り高き明大ラグビー部にとって、思い描いているラグビーができなくなることが、何よりも怖い。