J1鹿島アントラーズの選手が教材となり、ホームタウンの小学生に正しい食習慣を教える「アントラーズ食育キャラバン」の授業が始まった。毎回トップチームの選手が登場する教材にはFW染野唯月(19)、MF荒木遼太郎(18)、MF松村優太(19)、GK山田大樹(18)の新人4選手が登場。チームのオフィシャルパートナー昭和産業協力、公認スポーツ栄養士の松田幸子氏が監修し、2014年の開始から7年目を迎える今年は、茨城県鉾田市内の9校を対象に、12月末までオンライン形式で実施される。

では、その教材をのぞいてみよう。

朝食抜きは絶対にNG!

冒頭「朝食をしっかり食べていますか?」という問いかけで始まる。成長期の子どもたちの発育を支えるのは正しい食習慣。朝昼晩の3食を欠かさず食べることで、筋肉や骨格など丈夫な体の基礎をつくることが強調されている。

朝食にはその日1日の体のリズムを整えるという重要な役割がある。朝ご飯を食べることで血糖値や体温が上昇し、やる気や元気が出る。朝食を食べない子どもたちも増えているが、脳や体を目覚めさせてくれる朝食抜きは「絶対NG!」と説いている。

5大栄養素をポジション別に例えると

成長期には①炭水化物(糖質)、②脂質、③タンパク質、④ミネラル、⑤ビタミンの5大栄養素をバランスよく摂ることが大切になる。面白いのは5大栄養素をサッカー選手のポジションに例えた例だ。

炭水化物フォワード。瞬間的にすばやく動いてゴールする
「歩く、走る、蹴る、投げる、泳ぐなど体を動かすためのエネルギー源。脳のエネルギー源でもあり『考える』『集中力を持続する』『的確な判断をする』などのためにも必要」

脂質サイドバック。一番走るポジション。90分間、スピードも落ちずにずっと走っていられる
「体内に体脂肪として蓄えられ、長時間運動をする際などに、徐々に長く燃焼するエネルギー源となる。炭水化物とタンパク質に比べて、2倍以上のエネルギーを持っている」

タンパク質センターバック。相手の攻撃をしっかりと食い止める体を作る
「筋肉、血液、骨、皮膚、髪の毛、爪など、主に体を作る。筋肉は水分を除いた量のうち、約80%がタンパク質。運動で傷ついた筋肉の修復に欠かせない」

ミネラルゴールキーパー。最後のとりで。骨が折れたら体も動けない
「骨や歯を作る『カルシウム』、血液の材料になる『鉄』など、体の機能調整に欠かせない栄養素」

ビタミンミッドフィルダー。フォワードとディフェンダーのつなぎ役。他の栄養素をつないで助ける
「炭水化物、タンパク質、脂質の働きを助けて、体を調整する。ビタミンB1は炭水化物をスムーズにエネルギーに変え、ビタミンCはコラーゲンをつくってケガの回復を助ける」

「栄養ダブルハットトリック型」食事

5大栄養素がバランス良く摂れるメニューは「栄養ダブルハットトリック型」の食事と名付けられた。それは❶主食(ご飯やパン、麺類など)、❷主菜(肉や魚介類、卵、豆腐などのおかず)、❸副菜(野菜など)、❹汁物(野菜や海藻、貝類などが入ったみそ汁やスープ)、❺乳製品(牛乳やチーズ、ヨーグルト)、❻果物(ビタミンCと糖質が多いオレンジ、キウイ、イチゴや、糖質が多いバナナ、ブドウなど)―の6つの分類を意識した食事のこと。

栄養素では覚えにくいものも、実際に目で見られる食品なら覚えやすい。6点全てそろえた「ダブルハットトリック」を決めてみよう。

地産地消で自分たちが住む街を誇る!

教材では子どもたちに、ホームタウン5市の食材を食べることも勧めている。

地産地消のメリットとして、新鮮で栄養素が豊富なだけでなく、「いつ」「どこで」「誰が」作ったか分かりやすいので、食の安全・安心につながることも説いている。ちなみに鹿島アントラーズのホームタウン鹿行(ろっこう)地域は、メロン、ピーマン、水菜、チンゲンサイ、エシャロットなどが国内生産量1位。鹿島灘ハマグリや、ローズポークなど、豊かな海産物や畜産物もオススメされている。

気になるサッカー選手の食事事情

最後は、鹿島のユース選手寮で人気の献立が紹介されている。

試合の日の朝ご飯で人気のおかずは「肉団子と春雨の白湯スープ」。納豆やちくわの照り焼き、厚焼き卵も添えられている。果物の梨とオレンジジュースも欠かせない。献立ポイントには「複数の炭水化物(ご飯・ワンタン)を組み合わせると時間差で吸収され、長時間エネルギーを体に供給し、集中力を維持できる」と記されている。また、温かいスープでさらに消化吸収を高め、食事でウオーミングアップを行うこともポイントだ。

普段の昼ご飯のメニューでは「サバのみそ煮」が紹介されている。こちらは副菜にバジルソースのポークステーキや、筑前煮、チンゲンサイのマーボー炒めなども。「サバはビタミンB群を豊富に含み、午後のトレーニングに向けてエンルギーを作り出すのに役立つ。バランス良くタンパク質を摂るために、アミノ酸スコア100の豚、鶏、魚を一緒に」というのがポイントだ。バジルソースは免疫力を高め、骨の形成を助ける効果もあるなどと記されている。

そして、大切なことは食事をするだけではないということ。正しい姿勢や正しいはしの持ち方も細かく紹介。「食に携わる人たちに『ありがとう』の感謝の気持ちを忘れないように心がけましょう」と締められている。

【アスレシピ編集部】