第100回の記念大会となる全国高校ラグビーは、27日から大阪で開催される。福島代表は6年ぶり2度目出場の学法福島。「学福の若大将」こと、SH渡辺辰徳主将(3年)を中心に、目標に「全国2勝」を挙げ、花園での年越しを実現させる。
「若大将」ことSH渡辺辰徳主将がけん引
高校ラグビー界の「若大将」が学法福島を引っ張る。163センチ、67キロのSH渡辺辰徳主将(3年)だ。同校野球部OBの父晋也さん(51)が筋金入りのG党で、巨人原辰徳監督(62)が名前の由来。渡辺は「(名前について)よく聞かれますが、特に何も思っていない」と苦笑い。フィールドでは、的確なパスをFW陣に供給。つなぎ役に徹している。「持ち味のモールに加えて、展開ラグビーを取り入れた。チームの形はできている。自信を持って臨みたい」と意気込んだ。
父の期待とは裏腹に、野球に興味を持たなかった。「野球やってくれよ」と懇願する父の言葉に背を向け、小2からドッジボールクラブに所属。だが、小5の時、父の我慢が限界に達し、強制的に福島リトルリーグで野球を始めることになった。「本当に嫌だった。硬式の球が怖かったし、全然楽しくなかった」と振り返る。ポジションは中堅、二塁。小技を得意とする器用な選手だった。中学1年時は主力として全国大会に出場。徐々に野球の楽しさを実感した。「最終的には良かったのかな」と、今では父に感謝する。
ラグビーは未経験だった。高校入学直後、放課後になると面識のないラグビー部の先輩が教室にやってきた。抱きかかえられ、運動場に連れ出された。「最初は渋ってたんですけど、熱心な勧誘に『やるしかないかな』と」と腹をくくり、5月に入部した。ルールはユーチューブで勉強。分からないプレーがあれば、熱心に調べ尽くした。父も大学選手権を毎年欠かさずテレビ観戦するほどのラグビー好き。「花園出場を決めて、喜んでくれた。全国でも良い姿を届けたい」と、プレーで親孝行を誓った。
6年ぶりの全国切符も、花園出場は通過点だ。「年越しが最大の目標。そのために全国で2勝を挙げたい。やっと、スタートラインに立てた」。ここからが勝負。学福の若大将を中心に聖地で躍動する。
卵かけご飯で3年間で10キロ以上増量
強靱(きょうじん)な肉体を武器に花園で暴れまくる。学法福島ラグビー部は食事トレーニングで肉体改造に励んでいる。田中瑞己監督(46)は「ラグビー選手は体が大きくないと」と指揮官の号令の下、選手は週3回以上のペースで卵かけご飯をかき込む。1年生と3年生では、体格の違いが一目瞭然。高校3年間で体重は約10キロ以上増えるという。実際にFWの3年生4人が100キロ超え。「重戦車カルテット」を形成している。
補食は筋力トレーニングの前にとる。2、3年生はご飯600グラム、1年生は同400グラムとノルマを定める。そのため、田中監督の1日は米洗いからスタート。20合用を2台、10合用を1台と計3台の炊飯器をフル稼働させ、部員33人分の50合を炊いている。「最初は食べられない子もいますが、少しずつ食べられるようになる。(選手の成長は)目に見えて分かりますよ」。たくましい体は指揮官のサポートもあってこそだった。【佐藤究】
(2020年12月3日付、日刊スポーツ東北版掲載)