東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で学法石川(福島)魂を継承する。東農大・高槻芳照(1年)は10月の予選会(ハーフマラソン=21.0975キロ)で1時間2分35秒をマークし全体34位、ルーキーでは5番目。同大は7年連続予選落ちも、個人として関東学生連合チームに選ばれた。前回大会は自身と同じ福島出身の高校OBが躍動。東洋大エース相沢晃(23=旭化成)は2区で、明大エース阿部弘輝(23=住友電工)は7区でともに区間新を刻んだ。全国的にはまだ無名だが、偉大な先輩を追い遅咲きの花を咲かす。
順風満帆な競技人生ではなかった。名門の「学石(がくせき)」出身の高槻だが「高校で自分自身あまり結果が出ずに競技を続けられるか難しい状況だった。1年生のころから(東農大の)小指(徹)監督が気にかけてくれていて、拾っていただきました」。学生連合の一員となり「この経験を持ち帰り、22年はしっかり農大で出たい」。最高のパフォーマンスで恩返しを誓う。
初出場となった昨年の全国高校駅伝(都大路)では4区20位。本調子にはほど遠い内容で「区間賞を狙っていたが、雰囲気にのまれてしまった」。輝かしい実績を誇るOBも都大路での悔しさを糧にしてきた。1万メートルで東京五輪代表に内定した相沢は高校1年時に2区6位、2年時に4区19位、3年時に4区14位で、阿部は2年時に6区4位、3年時に1区10位。2人の学年は「最強世代」と呼ばれたが、高校最後の15年に学法石川は7位に沈んだ。それでも同校で磨いたスピードをベースに大学で実力を伸ばし、箱根駅伝のスターランナーに成長した。
現在、東農大の寮ではコロナの影響で食事が提供されず、それぞれが自炊か外食、注文で食べる形をとる。高槻は「授業の課題も結構あり、自分で作るのが大変で、外食がメインになっている」。いかに安く、野菜を多く食べられるかをポイントに「塩分や脂質過多にならないようにしています」。難しい自己管理が求められている。
本戦では湘南の海岸沿いを走る3区で出場を目指す。「前半は下るけど、後半はちょっとタフで、気温が上がって風が強くなり、スピードランナーにあまり向いていないコースと言われてるみたいです。自分はスピードよりもスタミナで持っていくタイプ。向かい風とかも苦手意識がないので、一番持ち味を発揮できると思うし3区を走りたい」。力強く「湘南の風」を切り裂く。【山田愛斗】
◆高槻芳照(たかつき・よしてる)2001年(平13)5月18日生まれ、福島市出身。学法石川から東農大に進学。自己ベストは5000メートル14分22秒82、1万メートル29分53秒70、ハーフマラソン1時間2分35秒。家族は父。178センチ、56キロ。
(2020年12月17日、ニッカンスポーツ・コム掲載)