<全国高校サッカー選手権:青森山田4-0堀越>◇準々決勝◇5日◇駒沢
前年度準優勝の青森山田が堀越を圧倒し、3大会連続4強を決めた。
母の愛情こもったカレーに支えられ
コトコト-。鍋からスパイスの香りが漂ってくる。じゃがいも、ニンジン、たまねぎ…。具材は溶けて小さくなってきた。炊飯器には2合の米。ロースの豚カツもサクッと揚がった。大好きなカツカレーが出来た。堀越(東京A)のエースFW尾崎岳人(3年)の勝負メシ。女手一つで育ててくれた母美香さんは「普通のルーですけどね」と笑う。「本人には言っていないですが、すり下ろしたニンニクも入っています。風邪ひかないように」と少し恥ずかしそうに言った。
初戦の2回戦、3回戦。そして、敗れた準々決勝の青森山田戦の前夜も、やはりカツカレーだった。岳人は「恥ずかしくてあんまり言えないけど、おいしいです」。昔から好物だったカレー。選手権予選を突破した後、全国で勝利する意味を込めてカツを添えた一品をリクエストした。
都内で居酒屋を営む美香さん。夕方から夜まで懸命に働く背中を、岳人は目に焼き付けている。息子は「忙しいのに、昼の弁当から、補食用の食事まで準備してくれて。道具だって高いのに」と感謝しきれない。卒業後は大学でサッカーを続ける。「いつか、プロになって、ちゃんと恩返ししたいです」。
普段は、面と向かって感謝の気持ちを伝えられない。準々決勝後、美香さんの携帯が鳴った。岳人からのLINEだった。
サッカーをやらせてくれてる環境を作ってくれて本当にありがとう。結果はベスト8で終わってしまったけど、自分のサッカー人生はまだ終わりじゃないので今後ともサポートよろしくお願いします! そして高校3年間弁当作るのも本当に大変だったと思うけど、やりきってくれてありがとう。いつもは恥ずかしくてこんな事言えないけど、最高の母を持ちました。本当に大好きです! (原文まま)。
美香さんの涙は止まらなかった。大好きなお母さんの作るカツカレーを食べて、岳人はまた1つ大人になっていく。【栗田尚樹】
(2021年1月8日、ニッカンスポーツ・コム掲載)