「上級食育アドバイザー」。先日ようやく資格合格認定証が届いた。コロナ禍での外出自粛期間を、なにか有意義な時間にしたいと思い挑戦した資格取得。選手時代の苦労から、「食」への関心や興味は変わらずにあった事が、この資格を選んだ理由だ。
飛び込み競技は水着一枚で美しさを競う採点競技。そのため、審判を魅了する演技力だけではなく、体形(見た目)なども採点に影響すると教えられてきた。それは理解できていた。
それでも、食べてはダメだと思えば思うほど出てくる食欲。成長期には、太る恐怖心を持ちながらも食欲を止められなかった。食べては後悔する日々で、ストレスはたまるばかり。少しの体重の増加でも、コーチの目はごまかせなかった。自分自身でも水着の着心地や、入水時に体をなぞる水の感触からも変化を感じとっていた。
痩せたい一心で、選手時代にはさまざまなダイエットを試しては、リバウンドや挫折を繰り返した。やっと成長期が落ち着いても、生理の影響からくる食欲増加はずっと悩みの種だった。
栄養素のとり方が明確に
20代半ば頃になると、体形維持だけではなく、体調管理やケガをしないためにも、食生活にはかなり気をつかっていた。
今回、取得した「上級食育アドバイザー」という資格は、食に関する幅広い知識を持つと証明してくれるものだ。栄養学の基礎を学び、病気を予防するための食事や、高血圧や動脈硬化などの諸症状について栄養学の観点で見られるようになり、改善や、悪化しないように努めることが出来るようになるというもの。
健康で丈夫な体を維持していくためには、年齢によって、どのような栄養素をどれくらい摂取すればよいのか。自分の経験からでも、ぼんやりとは想像できていたが、今回、栄養学を学んでみて、はっきりと見えてきた。
例えば、体の発達が目覚ましい乳幼児期の0歳~5歳。現在3歳の娘はまさにこの時期で、食習慣の基礎をつくる、とても大切な期間である。好き嫌いを減らすためにも、この時期にできるだけ多くの食品に慣れさせる。そして、味付けはできるだけ薄味にし、この時期に敏感な味覚を鍛えることも重要である。食材そのもののおいしさを味わえるようになれば、将来、高血圧などになるリスクを防げる可能性が高くなるからだ。
個人差はあるが、1度に食べられる量が少ない場合は、3度の食事だけでは十分な栄養素が足りないため、活動量に合わせて1~2回ほど栄養を考えた間食を加えてあげる。そして、何より食の楽しさを感じてもらうことが大切である。食への興味が、成長や脳の発達に大きく影響してくるからだ。
その後も、6歳~19歳(学童期・思春期)、20歳~64歳(青年期・中年期・老年期)、65歳以上(高齢期)と分けられ、年齢や個人の活動量、男女によっても必要とする栄養素や摂取量は異なる。
健康は1日にして成らず
今まで、なんとなくでしか見ていなかったビタミンの種類や役割、栄養素についても、詳しく知れば知るほど面白かった。すぐに日常の中で実践できることばかりで、現役時代に学んでおけばよかったと、今更ながらに感じた。
「食」への関心も、家族ができてからは「痩せたい」という願望より、まだ小さい娘のためにも「健康でいること」が第1の目的になった。そのことが、今回の資格習得のモチベーションにもなってくれた。「健康は1日にして成らず」。日々のちょっとした自分への気遣いが、未来の健康へと導いてくれる。これからも、この資格で得た情報を生かすと共に、引き続き栄養学を学んでいこうと思う。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)
(2021年3月3日、ニッカンスポーツ・コム掲載)