投球フォームや打撃フォームだけでなく、ユニホームの着こなしや走り方などからも選手個々の特徴は見える。担当記者なら遠くからでも選手を見分けることができるものだが、今年、広島大瀬良を見つけるのが難しくなった。

練習中、話し込む投手キャプテンの大瀬良(左)と野手キャプテンの鈴木誠(右)(撮影・加藤孝規)
練習中、話し込む投手キャプテンの大瀬良(左)と野手キャプテンの鈴木誠(右)(撮影・加藤孝規)

ひとつは体形の変化にある。昨季中から約5キロ絞り込み、上半身は別人のよう。昨季まではウエートを生かした投球で、最多勝の18年夏は体重101キロあったという。だが、昨年9月の右ひじクリーニング手術を機に方向転換。運動量の少ないオフは徹底した食事制限でもなかなか落ちず、ストイックに走り込んだ。リハビリを中心とした3軍のランニングメニューが終われば、2軍のランニングメニューにも加わった。約5キロの減量に加え、体脂肪約5%カット。さらに筋肉量は向上させるという肉体改造に成功した。

歩き方も昨季までと変わっている。聞けば、猫背のようにならず肩甲骨を寄せる意識で胸を張るようにし、足はがに股にならずに真っすぐ並行に踏み出すように意識しているという。「目に見えないアップデートもしていかないといけませんから」。しなりを使った投球フォームを可能にするため、意識改革も同時並行で進めている。

目に見えないアップデートが、マウンドでの大きな変化につながっている。ブルペン捕手も、女房役の会沢も口をそろえる。「今年の大地はレベルが上がっている」と。オープン戦18回連続無失点で迎える自身3度目の開幕マウンド。きっと対戦相手も、ファンも、記者も、大瀬良大地という投手をアップデートすることになるだろう。【前原淳】

(2021年3月24日、ニッカンスポーツ・コム掲載)