明治大学は4日、ラグビー部の神鳥(かみとり)裕之新監督の就任記者会見を開いた。OBでもある神鳥監督は、8季務めたトップリーグ(TL)リコーの監督から転身。「大きなチャンスをいただけた。大学スポーツで勝つということは最も重要なことだが、同時にそこに向かうプロセスや努力など人間性も高めながら、常に優勝争いの場所に居続けるチームにしたい。在任期間中には必ず優勝する」と意気込んだ。リコーから出向の形で指揮を執り、期間は決めずに単年契約を更新していくという。
神鳥監督は大阪工大高(現・常翔学園)から明大に進み、FW第3列で活躍。3、4年生の時には全国大学選手権の連覇に貢献した。1997年にリコーに入り、現役引退後、リクルート担当などを経て2013年から監督を務めた。
ちょうど1年前、大学時代の1学年後輩の田中澄憲前監督(45)から後任の打診を受けた。「田中前監督が“勝つ文化”を作り上げ、選手1人1人の取り組む姿勢の変化を1人のOBとして見ていた。話を受けた当初は、あの北島(忠治)監督のポジションに立つわけだし、自分が引き継げるかという迷いもあったが、こんなチャンスはなかなかなく、後々後悔したくないと思い、引き受けさせてもらった」。伝統ある母校の監督に覚悟を持って就任したと明かした。
明大はこれまでも体作りにフォーカスし、食事面、フィジカル強化などに力を入れながら競技力を高めてきた。2月からスタートした新チームでは体作りを一層強化。「ラグビーの戦術、テクニカルという以前の一番根っこの部分、チームとしての幹となる部分を徹底的に強化してくれている。フィットネス、ストレングス、体の大きさ、動き回れるスピード…。これからテクニカル的なことを身に付ければ、良いチームになるんじゃないか」。TLが5月終了だったため異例の6月就任となったが、神鳥監督はシーズン半ばでの引き継ぎにも不安はないとし、3季ぶりの王座奪還を目標に掲げた。
都内合宿所で4学年、約100人の大所帯で生活を共にする選手たちは卒業後、全員が第一線でラグビーを続けるわけではない。学生ラガーマンとしての最終目標は「一言で言うと、大学を卒業した後、ラグビー以外でも何でも通用する人材になること。ラグビーの競技力を上げていくのと同時に、同じぐらいのスピードで人間性も高めていく、そんな姿が大学4年間で見られれば」と、選手の内面にも磨きをかけていく。
田中前監督は強烈なリーダーシップで、22年ぶりの大学王者に導くなどチームをV字回復させたが、神鳥監督は別のアプローチとして「対話」を掲げた。「ハイパフォーマンスを出すための準備、取り組みといったトップリーグでの経験を伝えることができるのが私の強味。田中前監督が作り上げた今の明治大学に、私の強味をしっかりと加味してチームを進化させていきたい。学生、スタッフと対話をしながら一緒にチームを作り上げていきたい」。田中前監督はそんな神鳥監督に「人間として安心して任せられる」と全幅の信頼を寄せている。
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