東京五輪の男子3000メートル障害で日本勢49年ぶりに決勝進出した三浦龍司(19=順大)が8分16秒90を記録し、日本人初となる7位入賞した。過去に個人トラック種目では、93年前の28年アムステルダム五輪女子800メートルで人見絹枝が銀メダルを獲得しているが、男子は誰もいなかった。ハーフマラソンU20(20歳未満)日本最高記録を持つ逸材が歴史的快挙こそ逃したが、世界を相手に力を尽くした。

三浦が通う順大近くの「焼肉レストラン川崎苑」(千葉県印西市)では、店主やおかみらがテレビの前で声援を送った。

男子3000メートル障害決勝、7位入賞し日の丸を広げる三浦(撮影・江口和貴)
男子3000メートル障害決勝、7位入賞し日の丸を広げる三浦(撮影・江口和貴)

おかみは「三浦くんには力をもらっている。どうしても声も出してしまいます。とても礼儀正しくて、頭が切れる子ですね。気配り、目配りも出来る」。人間的な部分を、第一に絶賛した。強豪アフリカ勢と互角に渡り合い「入学した頃は、まさか世界のトップと戦うとは思わなかったのですが、世界に通じるすごい選手になったことは、普段の性格や態度がすばらしいからだと思っています」と拍手を送った。

三浦龍司も訪れる焼肉レストラン川崎苑(撮影・鎌田直秀)
三浦龍司も訪れる焼肉レストラン川崎苑(撮影・鎌田直秀)

象徴的だったのは、同店で目にした三浦の姿勢だった。かつて日本陸上競技連盟や日本体育協会(現日本スポーツ協会)の幹部を務めた順大名誉教授の帖佐寛章氏(91)との交流会。陸上部の監督、選手らが集う中で、「自分が食べるのではなく、先生に肉を焼き、取り分け、お皿が空けば店の厨房へと持って行く。最近の学生では、なかなか出来ていない行動でした」。目上の人、先輩、後輩、すべての人に敬意を表す三浦だからこその成長、偉業であることを強調した。

三浦龍司も大好物な焼肉レストラン川崎苑の人気メニュー。右から時計回りにカルビ、タン塩、チョレギサラダ、漬物各種、ロース(撮影・鎌田直秀)
三浦龍司も大好物な焼肉レストラン川崎苑の人気メニュー。右から時計回りにカルビ、タン塩、チョレギサラダ、漬物各種、ロース(撮影・鎌田直秀)

「学生ですから、頻繁に来て食べられるわけじゃないですよ」とほほ笑む。陸上部では正月の箱根駅伝前後や、大会などの決起やご褒美に団体で訪れることが多い。タン塩やロースなどの肉はもちろん、三浦はチョレギサラダが好きだと言う。「来た時は、ご飯は漫画みたいな大盛りにするんです」。愛情たっぷりな“順大の母”の感動も大盛りだった。【鎌田直秀】

三浦龍司(みうら・りゅうじ) 2002年(平14)2月11日、島根県浜田市出身。浜田東中−洛南高。洛南3年時は高校総体近畿大会決勝男子3000メートル障害で、30年ぶりの高校記録更新となる8分39秒49。昨春、順大に入学。スポーツ健康科学部では「筋肉」「内臓」「血液」をテーマに研究し、競技に生かす。5000メートル自己ベストは13分26秒78。165センチ。

3000メートル障害 「サンショー」と略される。3000メートルを走る間に障害物(高さは男子91.4センチ、女子76.2センチ)を28回、池のような水濠を7回越えていく。各周に5回の障害物があり、その4番目が水濠であることがルール。水濠以外の4つの障害物は移動式。手をかけて越えてもいいが、外側を通ったり、下をくぐったりするのは禁止。

(2021年7月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)

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