中学生の硬式野球クラブチームの日本ポニーリーグがこのほど東北連盟を立ち上げ、岩手、山形、宮城、福島、茨城、栃木、新潟県にある9リーグが加盟した(2021年11月現在11チームが登録)。そのうちの7チームが参加した「マルハンカップ東北連盟発足大会」の決勝と閉会式が6日、福島・南相馬市野球場で行われ、宇都宮ポニーが8-2で栃木ポニーに勝利し、初代王者に輝いた。

ノーサイン野球で優勝した宇都宮ポニーは来年3月の全国大会出場が決まった
ノーサイン野球で優勝した宇都宮ポニーは来年3月の全国大会出場が決まった

優勝した宇都宮ポニーは、来年3月に沖縄で行われる選抜大会に出場する。

家族に優勝を報告する神長主将とご家族(左)、大会MVPの宇都宮ポニー沼尾優希選手
家族に優勝を報告する神長主将とご家族(左)、大会MVPの宇都宮ポニー沼尾優希選手

帽子のつばには「夢なき者に成功なし」と記す主将の神長琉人選手(2年)は「全国大会出場はまだ実感ないけど、オフに鍛えて、どこよりも負けないチームになりたい」と意気込んだ。

準優勝の栃木ポニーもリーグ戦4勝2敗と奮闘した
準優勝の栃木ポニーもリーグ戦4勝2敗と奮闘した

福島産の米・野菜・肉で作ったカレー

震災から10年、ポニーリーグ東北連盟は野球を通じた復興支援にも尽力していく。この日参加した5チーム、約200人の中学球児と保護者は、閉会式前に地元食材を使ったカレーライスランチを楽しんだ。

東北連盟発足大会の閉会式前に、地元食材産のカレーをほおばる仙台ポニーの選手たち
東北連盟発足大会の閉会式前に、地元食材産のカレーをほおばる仙台ポニーの選手たち

田村市を中心とした福島産の米、野菜、牛肉でマルハンダイニング伊達店が200人分のカレーを調理。青空の下、ケータリングで提供された特製の「マルハンコドモ満福カレー」に舌鼓を打った。

張り切ってカレーを盛り付ける保護者たち
張り切ってカレーを盛り付ける保護者たち

食材を提供したのは、環境商材の開発・製造を行うコドモエナジー(株)の岩本泰典社長(59)だ。岩本社長は10年前に福島に防災用発光商材「ルナウェア」の製造工場を設立した縁で東北の復興支援を行っている。「スポーツを通じて福島から世界へ安全と元気を届けたい。ポニーリーグさんの『選手ファースト』の理念に共感し、支援させていただきました」と話した。

仙台ポニーの赤坂海斗主将は「野球は楽しい! オリックス山本投手のような速い球を投げてみたい」
仙台ポニーの赤坂海斗主将は「野球は楽しい! オリックス山本投手のような速い球を投げてみたい」

東北は震災以降、子どもの野球離れが深刻化しており、休部に追い込まれたポニーリーグのチームもあった。そんな中、今年8月にマルハン(株)の協賛の下、この「マルハンカップ東北連盟発足大会」が開幕。加盟する東北連盟では7チームが30試合を行うことができた。今後もリーグ戦でより多くの選手に経験を積んでもらいながら、3つの理念を掲げる。

1年生チームの仙台中央ポニー・関根壮汰選手は「このカレーをいっぱい食べて体重をもっと増やすぞー!」
1年生チームの仙台中央ポニー・関根壮汰選手は「このカレーをいっぱい食べて体重をもっと増やすぞー!」

ポニー東北連盟の理念
1、地域との共生
2、地域密着
3、東北地区への貢献

仲山一也連盟長(44)は「野球離れが進む中でも、ポニーリーグは今年だけで2チーム新規加盟。部員増で再開できたチームもあり、元気を取り戻しています。3年以内に東北6県で15リーグ20チームまで増やすことが目標。チームが増えれば、チーム間の遠距離移動が減り、選手・保護者の負担が減るからです。移動時間が減れば、試合に出られる選手の数も増えていきます」と展望を語った。

「監督会議」で選手ファーストを確認

午前中には7チームの指導者による「監督会議」が青空の下で行われ、現場の悩みやリーグへの期待など本音ベースのトークセッションで盛り上がった。

監督会では元楽天投手の長谷部康平統括マネ(仙台ポニー・写真左から3人目)らが課題や指針を話し合った
監督会では元楽天投手の長谷部康平統括マネ(仙台ポニー・写真左から3人目)らが課題や指針を話し合った

「根性野球を変え、子どもたちを守るチーム作りを徹底する」(山形ポニー・長岡耕大監督)
「敷居が高いと思われている中学硬式のイメージ。罵声をなくし雰囲気づくりから変えていく」(岩手ポニー・那須野淳監督)
「投球制限や、学年別の大会がある点など、ポニーの良さをもっとアピールしていく必要がある」(仙台ポニー・長谷部康平統括マネージャー)
「体験会で15人が加入。試合に出られるんだ! というチャンスをもっと伝えていきたい」(福島ポニー・森藤強美代表)
「野球には親にできないしつけや教育があると思う。投球制限でケガ予防に努める」(栃木ポニー・野尻信重監督)
「ポニーのガミガミ怒らない指導は私自身にも合っている。理念にのっとって選手たちの成長を伸ばす」(鹿沼ポニー・橋本清監督)
「選手ファースト、リエントリー、地域貢献活動など、ポニーの特徴をPRしていく」(宇都宮ポニー・今山和之監督)

東北連盟とは言っても、栃木や新潟の4チームも所属しており、移動時間など課題点はある。その中で大人のエゴを押し付けず、積極的にアクションを起こしていこうと、意思確認する日になった。【樫本ゆき】

中学硬式野球 (財)日本野球連盟(JABA)傘下には、日本リトル野球協会(リトルシニア)、日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)、全日本少年硬式野球連盟(ヤングリーグ)、日本ポニーベースボール協会、九州硬式少年野球協会(フレッシュリーグ)の5団体が所属。2021年ドラフトで指名された128人の中学時代の出身チームは、硬式54.68%、軟式45.31%と硬式が若干上回っている。ポニーリーグの出身選手は栗山英樹氏(日本ハム元監督)、石井一久楽天監督、高橋由伸氏(元巨人)、宮城大弥(オリックス)、平良海良(西武)、梅野隆太郎(阪神)らがいる。ポニーリーグは世界最大組織で、日本ポニーリーグ協会は1975年5月に設立され、95団体、2312選手が登録(11月現在)。理事長は、ヤクルト、巨人、阪神でプレーした広澤克実氏。

※参考記事:ドラフト指名選手の出身中学チームと繋がり(高校野球ドットコム) https://news.yahoo.co.jp/articles/d6b9da8868e5265771f0931642c3d97b981ee2ae