毎日、料理をする上で必ずと言っていいほど使う包丁には、様々な種類があります。素材に合わせて使い分けることで、より快適に、楽しく調理ができることは分かっていても、実際には1本の包丁で済ませている方も少なくないでしょう。
それならば、よく切れて万能に使える1本を手にしたいもの。そこで「究極の1本を選ぶなら」として、創業114年の刃物メーカー「貝印」の包丁マイスター、林泰彦さん(60=マーケティング本部マイスター推進部シニアエキスパート)に包丁選びのポイントを聞きました。
包丁の利用目的、頻度などを明確に
まず林さんは誰が、どんな目的でどのくらいの頻度で使うのかを明確にするのが大切だとして、以下の3点を挙げました。
①目的やシーン
業務用か家庭用か、1人暮らしの人用か
②体格差の違い
使うのは男性か女性か、どういった体格か
③使用頻度
毎日たくさんの食材を扱うのか、たまに使う程度か
オールマイティーに使える「三徳包丁」
その上で、誰でも使いやすく人気のある包丁として「三徳包丁」を提案しました。三徳とは「肉・魚・野菜」のことで、それぞれの専用包丁の良いところを合わせたもの。刃渡り17センチほどで切っ先が少し丸くなっているのが特徴です。
オールマイティーに使えるため、実際に最も売れている包丁だといいますが、デメリットもあります。例えば、塊肉や大きな食材が切りづらい、食材に鋭く切り込むことができないなどで、料理好きな方や多くの食材を扱う人にとっては少々、物足りなく感じる部分もあるようです。
料理好きの方向け、多くの用途に使える「牛刀」
そこで林さんが、もっと多くの用途に使いたい人向けとして挙げたのが「牛刀」です。刃渡り21センチほどで刃先が少し尖っています。その刃先を使って野菜のみじん切りが早く上手にできたり、肉の下ごしらえや魚がさばきやすかったりするようです。
林さんが「私どもで行ったマーケティング調査によると、料理好きな方や料理研究家の方は三徳ではなく、牛刀をメインに使っている傾向がありました」と言うように、プロ向きの包丁とも言えます。ただ刃渡りが長い分、体が小さい人やまな板が小さい、キッチンが狭いと使いづらいというデメリットもあります。
また、包丁の扱いに慣れていない人、腕の力が弱い人は刃渡り13センチほどの「小三徳」が使いやすいようです。
1本100円~数万円、価格帯の違いは
同じ三徳包丁や牛刀であっても、100円から数万円まで価格帯に大きな幅があります。何が違うのでしょうか。
一般的に、良い包丁とは「よく切れて、切れ味が長持ちする包丁」のこと。切れ味を長持ちさせるためには「良い材料・良い焼入れ・良い刃付け」が必要となり、突き詰めれば突き詰めるほど製造コストがかかるため、高価なものになっていくわけです。
林さんは「値段が高ければ良く切れるというものではありませんが、ある程度のランクのものを手にするには、値段を見ることもポイントの1つ」と説明。金額感としては、1本1万円が目安になるようです。そのほか柄の素材や形状、口金の違いなども、手入れのしやすさや価格にも影響してきます。
つまり、自分にとっての「究極の1本」を手にするには、どのような人がどんな目的でどのくらい使うのかを明確にし、さらに価格という自分の価値観を加えて選ぶこと。これが包丁選びに失敗しないコツだと言えそうです。
【アスレシピ編集部・飯田みさ代】