中学硬式野球のポニーリーグで、昨年の全国選手権3連覇を果たした江東ライオンズ(東京・江東区)が4連覇に向けて動き出した。2021年秋に監督に就任し、この冬の食とトレーニングで選手たちを心身ともに強化させた田本剛監督(34)を取材した。
日本一を目指す集団、目的意識の高い選手たち
日本には中学生年代の硬式野球リーグがリトルシニア、ボーイズ、ポニー、ヤング、フレッシュと5団体ある中で、ポニーリーグはアメリカに本部を持ち、世界で50万人の選手を有するクラブチームの団体。日本には現在95団体、2312選手が登録しており、OBにはWBC監督の栗山英樹氏(小平ポニーズ出身)や宮城大弥(オリックス、宜野湾ポニーズ出身)らがいる。「野球は試合でうまくなろう」がリーグのコンセプトで、公式戦は学年別に編成された複数のチームでリーグ戦方式を取っている。
1976年創部の江東ライオンズは昨夏、昨年の大会で3学年すべてが関東大会で優勝し、トップチームは夏の全国選手権で初の3連覇を果たした。江東区に専用グラウンドを持ち、スタッフ17人、2学年48人の部員で活動。小学6年生を対象とした体験会では多くの参加者が集まり、今春には3学年で90人越えが予想されている。
田本監督は「ウチは日本一を目指す集団だと体験会のときから選手に伝えています。その覚悟で入ってきてくれた選手に対して、自分も正面から向き合っています。トップチーム以下の選手も一体感を持って練習に取り組んでくれています」と話す通り、厳しい練習にも選手たちは前向きに取り組んでいる。
伝統の冬トレ、おにぎりタイムは2回
伝統の冬のトレーニングは選手全員で12~1月の土日、朝7時台から夕方6時過ぎまで行う。6班に分かれて短距離ダッシュや体幹トレなどを含めたサーキットメニューは「地獄のトレ」と呼ばれるほどで、この名物練習を経て選手たちは強く、大きくなっていく。
お昼ご飯のほか、練習の合間には個人の目標に合わせた数のおにぎりの補食をとる。補食タイムは2回。
スポーツトレーナーの田本監督は定期的に選手の体力測定をして数値化している。食とトレーニングの成果で、一冬越えると身体がひと回り大きくなっていくという。成長期の体をたくましく育てるために年1回、保護者向けの栄養指導も行っている。
「全員でやり切った後に、心のコンディションも強化されていきます。トーナメントで戦う夏の選手権を勝ち上がれるのはここで頑張ってきた経験があるからです」(田本監督)。4月から中学3年となる関根悠楽主将は「1年生のときはキツくてついていけなかったけど、最上級生になってからはできるようになった。この練習を乗り越えて先輩たちが強くなっていくのを見てきたので頑張り抜きたい」、同じく3年になる上原慶選手も「冬トレをしてから50メートル走のタイムが0.8秒速くなりました。今年は5秒台を目指します」と目標を口にした。
細かいメニュー作りと保護者と連携
12年間のコーチを経て一昨年の秋に監督に就任した田本監督は、コロナ禍中は自らパソコンでオンライントレーニングのメニューを作成し、リモートで自主練習をサポート。IT技術を駆使して、チームパンフレットや選手勧誘のポスターを作成し、広報活動を推し進めた。「サブユニホームやタオルのデザイン、優勝したあとの号外PDFも作りました。業者さんみたいなこともやっています」と笑う。
年始めには保護者同士のソフトボール大会を企画。希薄になっていた指導者と保護者の交流も再開し、マルチな発想力でチームの魅力を膨らませている。
2月26日には関東49チームの頂点を競う春季大会が開幕し、トップチームは2連覇がかかっている。東京ドームで決勝戦(8月)が行われるジャイアンツカップに加えて、今年は新しく5団体で「真の中学硬式日本一」を決めるエイジェックチャンピオンシップが8月下旬に開催される。田本監督は「本気で日本一を目指しながら、選手と一緒になってワクワクした気持ちで野球に向き合っていきたい。今年は無敗で春季大会を勝ち抜いて選手権4連覇を含む、全ての全国大会で日本一を取ります」と決意を口にした。【樫本ゆき】