順天堂大学はこのほど、青年期にバスケットボールやバレーボールをしていた人は、高齢期(65~84才)の骨密度が高くなる可能性があることを明らかにした。青年期(13~18才)に骨に加わる刺激の大きいスポーツをすることが後年の骨密度維持が有効となり、青年期の運動実施が数十年後の高齢期の骨粗鬆症の予防や転倒・骨折のリスク軽減に役立つ可能性が示唆された。
青年期の運動が骨粗鬆症や転倒・骨折のリスク軽減
研究は、順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの大塚光大学院生(博士後期課程2年)、田端宏樹博士研究員、田村好史センター長補佐・先任准教授、河盛隆造センター長・特任教授、綿田裕孝副センター長・教授らの研究グループによって、東京都文京区在住の高齢者1596名(男性681名、女性915名)を対象に行われた。身体組成、血液検査、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)を用いて大腿骨頸部および腰椎の骨密度を評価。また、中学・高校生期に運動部活動に参加していたかどうか、参加していた人はどのようなスポーツ(部活動)に取り組んでいたかも調査した。
具体的には、大腿骨頸部および腰椎の骨密度を従属変数とし、各スポーツ(運動部活動)の実施の有無および参加者の特徴を独立変数として、青年期の運動種目と高齢期の骨密度との関連を重回帰分析を用いて解析した。その結果、中学・高校生期にバスケットボールをしていた男女で高齢期の大腿骨頸部骨密度が高く、バレーボールをしていた女性では、高齢期の腰椎骨密度が高いことが示されたという。
アスリートでなく一般人でも運動経験が高齢期まで影響
今回の研究の興味深い点は、競技レベルや運動量の多いアスリートなどでなく一般人であっても、数十年前の中学・高校生期の運動経験によって得られた骨利益が高齢期まで長期にわたって維持される可能性を示していることだ。中学・高校生期に骨に大きな刺激が加わるスポーツを行うことで、長期的に骨の健康をもたらし、将来の健康につながるという。
なお、運動強度、運動量、運動時間の詳細など、まだ不明な点が多く残されているため、今後さらなる研究を進めていくとしている。
骨量は20代でピーク、一度低下すると上がりづらい
骨量は20代にピークを迎え、加齢とともに減少。特に女性では閉経後に急激に減少し、70歳以上の日本人女性の約40%が骨粗鬆症と報告されている。骨粗鬆症を背景とする転倒・骨折は女性の要介護になる原因第2位でもある。骨密度は一度低下すると上がりづらいため、青年期に最大骨量を高めておくことが重要だ。
青年期に運動を実施すると最大骨量を高められることはよく知られており、特に骨に加わる刺激の大きい運動をしている人は、水泳やサイクリングなど骨に刺激の少ない運動をしている人に比べて骨密度が高くなるといわれている。しかし、青年期の運動実施種目の違いが長期的に影響し、高齢期の骨密度とも関連するかはよく分かっていなかった。
昨今の少子化で、部活動の運動部員数が減少傾向にあり、スポーツ庁の調査では2009年から2018年の間に中学生の運動部活動所属者が約13.1%減少したとの報告もある。骨密度が高まる青年期にこそ、骨に刺激を加える運動をして欲しいものだ。
この研究は2023年10月12日付で「Frontiers in Physiology」のオンライン版で公開された。