硬式野球の中学生リーグ、ポニーリーグの全日本選手権が7月20日~24日に東京・江戸川区球場ほかで行われ、茨城・将門(まさかど)ポニーが3位となった。猛暑の中での5試合中3試合で逆転勝ちした将門ポニーの選手たちはなぜ、最後まで粘り強く戦うことができたのか? その裏には、保護者たちの献身的な「熱中症対策」があった。
3月からの準備が功を奏した
将門ポニーは3月から綿密な熱中症対策を始めていた。選手にとって初の全国大会となった全日本選抜中学硬式野球大会の会場は沖縄。25度近い気温と強い日差しを想定し、夏の大会と同様の熱中症対策を「リハーサル」していたという。
キャプテン・斉藤城仁選手の母美樹子さんは言う。
「沖縄開催だったので春だからって油断せず、夏を想定した熱中症対策を『リハーサル』していました。そのお陰で夏の大会も問題なく分業で対策できたと思います。チーム一体となってつかんだ3位という成績で、本当にいい思い出になりました」。
今年のチームは学童野球時代から献身的なサポートをしてき た保護者が多く、それも功を奏した。将門ポニーの保護者たちがこの夏、ベンチ裏に待機して行った熱中症対策は以下の通りだ。
●クーラーボックスの活用
冷やしタオルや氷のうを常にベンチに用意し、選手たちがすぐに体を冷やせる環境を整えた。氷の入ったクーラーボックスに100円ショップで購入した氷のうと、冷やしタオルを常備し試合中に選手がすぐに利用できるように準備した。
●牛乳パック氷と大型バケツ
牛乳パックの空き箱を使って作った氷を各家庭から持ち寄り、大型バケツに冷水を用意。選手たちはこの氷水にペットボトルを浸けて、いつでも冷たい水を飲むことができた(春は氷を購入して準備)。
●経口補水液による適切な水分補給
常温の経口補水液を準備し、コップに適量を注いで提供した。選手たちが飲みすぎないように気を配りながら、必要な水分と電解質を補給できるように工夫された。
●段ボール製の大うちわ
運搬に使った段ボールを解体して大きなうちわを作り、ベンチ内のスタッフが選手たちを仰いで体温を下げた。これは、特に扇風機や冷房が設置されていない試合会場で大いに役立った。
●必勝ドリンク「オロポ」
オロナミンCとポカリスエットを半量ずつ紙コップに入れて作った「オロポ」をベンチ裏で提供。スタッフが考案した「必勝ドリンク」が選手たちの体力を回復させた。
レギュラーたちを支えた、選手の自主的なサポート
試合中は選手たち自身も自主的に熱中症対策を行っていた。中でも積極的に動いていたのが、控え一塁手の飯山僚太選手(3年)だ。試合に出ていない間、ベンチで仲間のクーリングを手伝った。
ピッチャーやキャッチャーの首を冷やしたり、必要なドリンクを用意したりと、選手たちの体調管理に積極的に関わった飯山選手。「少年野球時代から暑い夏を経験してきたので、こうした対策は小学生の時からやっていた。自分がやってもらったことを仲間にしていただけです」と謙遜するが、その働きは大きなものだった。
将門ポニーの奮闘の裏には、保護者たちの創意工夫や控え選手のサポートがあった。瀬田利浩監督は「熱中症対策にとどまらず、今年の保護者はInstagramへの投稿や、音響道具を使用したスタンド応援など、豊富なアイディアでチームの士気を高めてくれました。献身的なサポートのお陰で選手たちは安心してプレーに集中でき、チーム全体の士気も上がりました」と感謝する。
斉藤キャプテンの母美樹子さんは「最近はお茶当番が廃止されるチームも増えていますが、私はサポートをすることが大好きで、将門ポニーを選んだのもそれが理由です」と話す。カメラロールには多くの選手たちの写真が残されており「自分の子どもよりも他の子どもたちの写真の方が多くなっています」と笑い、チームに関わることに喜びを感じていた。
保護者の力強いバックアップもあって、将門ポニーは2季連続全国3位の好成績を収めた。
【樫本ゆき】
◆将門(まさかど)ポニー 2016年創部。坂東市立ポニーリーグ猿島球場を拠点に活動し、チーム名は坂東市ゆかりの武将・平将門が由来。2024年全国大会で春夏3位。木村勝彦代表、瀬田利浩監督、加藤敦郎コーチ、羽田勝コーチ。公式インスタグラム@masakado.bbc。