【Q】アスリート食には鶏のむね肉がいいと聞きますが、調理すると固く、パサパサになってしまい、子供たちはもも肉の方を好みます。むね肉をやわらかく調理する方法を教えてください。
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栄養満点、家計にも優しい優等生
唐揚げ、照り焼き、カレーに炒め物…鶏肉は、毎日の食卓に欠かせないタンパク源であるとともに、何より、お財布にも優しい優等生としても人気の食材です。
栄養面でも、毎日摂るべき必須アミノ酸、皮膚や粘膜の健康、眼精疲労に良いビタミンA、代謝を進めて細胞を活性化するビタミンB群、粘膜・消化器系の保護に良いナイアシンを多く含みます。
中でも注目すべきはむね肉です。脂質も少なく高タンパクで、アミノ酸結合体であるイミダペクチドを多く含みます。イミダペプチドは、疲労物質と言われる乳酸の分解を促進し、肉体の疲労感をやわらげる効果があります。また、活性酸素が増えた時に感じやすい精神的なストレスをやわらげる効果も期待できます。つまりむね肉は、アスリートにとってまことにいいことずくめの食材なのです。
でも…と思ったあなた。栄養面では優等生だとしても、ぱさつく、固い、旨味が少ない気がすると言いたいのではありませんか? プリっとジューシー、噛みしめると旨みがジュワっと広がるもも肉の方がおいしく感じるという気持ちもよくわかります。確かに、身体のためだからと無理して食べるのだとしたら本末転倒、長続きもしませんよね。
でも諦めないで! 肉を柔らかくする方法、いくつもあります。
例えば、タンパク質分解酵素を持つフルーツでマリネする(例:キウイマリネ)。筋繊維をほぐす力を持つ乳酸菌が多いヨーグルト(例:タンドリーチキン)に漬け込むなどなど。
中でも、鶏むね肉をデイリーユースにするなら、私のお薦めは、市販のサラダチキン風のゆで鶏が便利です。鶏むね肉はもともと脂質が少なく、水分が多い部位。ぱさつく原因は、加熱の際に肉が縮み、中にとどまりきれない水分がみんな外に出てしまうからです。酵素や乳酸菌の力で柔らかくするのももちろんですが、いかに水分量を減らさないで加熱するかがカギとなります。今回は、そんなポイントを押さえ、しっとりジューシーな「自家製サラダチキン」をご紹介します。
水分量を減らさず加熱がカギ
<ポイント>
①塩水を使い、冷たい状態からゆではじめる。
②ゆっくり弱火で加熱する。
③余熱で中心まで火を通す。
④液体の中で冷ます。
実は、肉の加熱というのは、肉自身の温度が100度まで上がる必要はなく、中心部が70度を過ぎれば、OKです。それを目指して保水効果の高い塩を使い、急激な縮みを避けるために火を通しすぎないように弱火でゆっくり加熱します。沸いたら火を止め、ふたをし、冷めていく過程のお湯で中心まで余熱を入れます。そして、表面の乾燥を防ぐためにじっくりゆで汁の中で冷まし、そのまま冷蔵庫で保存してください。
棒々鶏など一品料理として時々食卓に出すのももちろんですが、サラダに、サンドイッチに、朝食に卵と一緒に…など薄切りにしてハムの代用として使えば、ほぼ毎日一定量を摂取でき便利です。もちろん、炒め物や汁物には、料理の仕上げに加え、さっと温める程度で仕上げればジューシーさはそのままです。この自家製サラダチキンを使ったレシピ「サラダチキン タコライス風」もご紹介します。
添加物ナシが何よりうれしい自家製サラダチキン。ゆで汁は、捨てないでください。好みの味に整えてスープにすれば、溶け出た旨みも栄養も全て摂取できますよ。保存期間は、冷蔵庫で4日間が目安です。
●自家製サラダチキンの作り方
<材料>
・鶏ムネ肉 2枚(1枚250g程度のもの2枚=500g)
・水 1/2ℓ
・塩 大さじ1/2 (7.5g)
<作り方>
①鍋に水と塩を入れ混ぜて溶かす。
②鶏肉を入れて弱火にかける。
③沸いてきたら一度鶏を上下返し、火を極弱火にし、1~2分加熱したのち蓋をして、火を止め冷めるまで置く。
※鶏肉1枚が大きすぎる場合(300g以上)は、この加熱方法では中まで火が通らないので注意。
※鶏が液に浸かっていること。液が足りない場合は、塩水をプラス。
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[上田淳子先生への質問はコチラから](https://q.nikkansports.com/u/a/quiz/3603)