今年は大雨や台風が続きました。大型台風の被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。1日も早く、平常の生活が戻るよう祈っています。
日本栄養士会では、災害支援チーム(JDA-DAT)という組織が災害対策本部を設け、食事からの支援活動を行っています。ただ、特に食物アレルギーの方は自然災害時を見据えて、日頃から非常食を備えておく必要があると、以前のコラムでもお話ししました。今回の台風で被害に遭われた方の中に、食物アレルギーのために食事を苦労された方がいたのかどうか、食物アレルギーの患者さんと接する機会の多い私たちは、非常に気に掛かるところです。
食物アレルギーで栄養不足に
災害栄養の研究者による東日本大震災の避難者を対象とした調査では、災害から1カ月、3カ月を経過しても、避難所によってはタンパク質やビタミンB群が食事摂取基準の推奨量を下回る場所があり、ビタミン、ミネラルも推奨量を達するのに1~3カ月近く要したと報告しています。また、強いストレスによってビタミンCの消耗が激しい状況であるにも関わらず、ビタミンCの摂取量も震災発生1カ月後でも基準値の50%程度を推移していたようです。食物アレルギーで除去食品が多く、さらに手元に非常食がないと、食物アレルギーのない避難者よりも栄養素が摂取できていなかったと推察できます。
カセットコンロ、電気ポットはおすすめ
日頃からガス、電気、水、それぞれのライフラインが止まった時に、どこでどのような食事を用意できるのか、考えておくことが重要といえます。炊き出しではアレルゲンを除去した料理の提供は難しいため、食物アレルギーのある方はすぐに食べられるものを用意しておきましょう。簡単な料理ができる場合は、自分で調理することで安心して食べられると思います。カセットコンロ、電気ポットはおすすめの道具の1つです。
今回は「災害時のクイックホットご飯 ポークコーンピラフ」を紹介します。カセットコンロ、フライパン、包丁、菜箸、油、水が使える環境で、タンパク質、ビタミン、ミネラルを簡単に摂れる時短料理です。
タンパク質源は、沖縄料理で馴染みのあるランチョンミート(スパム)の缶詰を使用。肉にアレルギーがある際は、魚系の缶詰を用意しておきましょう。植物性タンパク質としては、粉豆腐や高野豆腐も非常食として役立ちます。ビタミン、ミネラル源は、トウモロコシの缶詰、野菜ジュースを使います。
避難中、野菜を調達しにくい時に重宝するのは、野菜ジュースです。ビタミンA、ビタミンC、鉄などが多く含まれており、開封前は常温保存ができるためにとても便利です。栄養素のバランスは、各社商品によって異なりますので、栄養成分をよく確認してから購入しましょう。
濃縮還元ジュースは生野菜より栄養価が低いため、あくまでも避難中の野菜の栄養素を補給するための食品として捉えておきましょう。なお、避難場所がむくみやすい環境の場合もあるため、野菜ジュースや缶詰は、できる限り無塩タイプを選びましょう。
また最近、「非常時ピクニック」をする親子連れが増えているとも聞きました。避難指定の公園や避難先近くの広場などで、家族で避難を想定したピクニックをして日頃から慣れておくことが目的のようです。どんなものがあると便利なのか、実際には不要なものは何かイメージがつきやすくなります。非常時に備え、ゆとりのある時に、自身や家族のアレルゲンや、味に適した非常食レシピを試作しておきましょう。