東京オリンピックが終わりました。無観客開催となった今大会は多くの制限があり、選手たちが力を発輝する上で、メンタル面のケアも相当なエネルギーを費やしたのではないかと想像します。
食物アレルギーにおいてもメンタルケアを学ぶことは、誰もが心地良く暮らすために重要です。食物アレルギーを持つ日本の小学生、中高生、大学生に集団生活における悩みや課題について調査した結果があります。その一部を紹介し、アレルギーがある方もない方も、気持ちよく過ごすためのヒントを紹介します。
食物アレルギーのある学生からのコメント
アレルギーのある学生からは、次のようなコメントがありました。
●皆さんと別メニューは嫌だけれど、仕方のないことで慣れている。ただ、もっと楽しく食べるために、みんなに食物アレルギーを理解して欲しい
●アレルゲンの含む食品が出されて食べられないと言い出せないとき、こっそり友だちが食べてくれてうれしかった(食物アレルギーが軽度の場合)
●アレルギーのない人にわかったような口を聞かれるのが嫌だった
アレルギーで食べられない食品が出てきた時に、断れなくて戸惑う、と回答した中高生が約3割います。ただし、その中でも「自分の食物アレルギーを知る人」、「食物アレルギーの知識のある人」には断ることができると回答しています。
普段、食物アレルギーの方に触れる私たちも「過剰に心配して欲しいとは思わないが、食物アレルギーについて理解して欲しいと望んでいる」といった声を耳にします。アレルギーがない方も、アレルギーについて正しい知識を得ることが望まれているのです。
食べてみたくなる工夫を一緒に
アレルギーのある方も、検査結果が改善傾向にあり、少量ずつ食べられる段階になったら、少しずつ食べられるものを広げていくと楽しみが広がります。ただ、何年もアレルギーのために食べていなかった食品を食べて「アレルギー反応が出てしまったらどうしよう」と不安や抵抗感を示す方もいます。そのような時には、食べてみたくなる工夫を一緒に考えてみましょう。
外来指導においても、例えば、卵アレルギーの方には、卵の含まれているプリン、シュークリーム、オムライスを、乳アレルギーの方にはバニラアイスなどの食べてみたい食品を見つけ出して、一緒に食べる楽しみを見つける方法を提案することもあります。医師から「食べても良い」と指示が出された場合は、体調が良く、医療機関が開院している時に医師から指示されている量を少しずつ食べてみるよう心がけて下さい。もちろん、保護者やサポートできる方が身近にいないところでは、食べたことのない食品を食べることは控えましょう。
アナフィラキシーショックの経験があったり、なかなか改善しないと不安が高まったりすると、過度に食事を制限する、引きこもる、攻撃的になる、といった行動が出てくる方もいます。1人1人向き合い方は異なるものの、上記の調査結果にもあるように、すぐに自分の思いを言い出せない方もいることを理解し、みんなが楽しく過ごせる食事時間となるようにそれぞれが歩み寄っていける環境になることを願います。これまでのコラムにも書いていますが、みんなが食べられる料理を一緒に考え、一緒に作ることも楽しみを広げる1つとなることでしょう。
今回紹介する料理は、「牛肉とミニトマトの黒酢さっぱり炒め」です。夏は、鉄などのミネラルも汗と一緒に排出されることから貧血になりやすい季節。このメニューでは、鶏肉や豚肉よりも鉄が豊富に含まれている牛肉を使っています。蒸し暑い夏でも食べやすいように、冷やした水菜とミニトマトを最後に入れています。
なお、黒酢はメーカーによって小麦や大豆が含まれることもあります。アレルゲンが該当する場合には、食品表示を十分確認してから購入しましょう。
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