中高生アスリートを対象に調理実習を行っていると、選手たちから多くの質問を受けます。最近では「ホウレン草は水からゆでるのか? お湯からゆでるのか?」と聞かれました。

普段、選手たちはホウレン草をゆでる機会があまりありません。いざ、おみそ汁の具やお浸しなどにする時に「そのままでは食べられない! ゆでなければ」と思ったようですが、水から火にかけるのか、沸かしてから入れるのかと悩んだようです。

野菜のゆで方、土の上で育つか下か

野菜にはそれぞれゆで方があります。調理の初歩的な基本ですが、保護者の方もその理由をしっかり説明できるでしょうか。何となく、感覚で…という方も、実はいるのではないかと思います。

「水から? お湯から?」の違いは、土の上に育つか土の下に育つかによって違います。

水からゆでるのは主に根菜類

水からゆでる野菜は、土の下に育つ根菜類が多く、ニンジン、大根、ジャガイモ、ゴボウなどがあります。沸騰してから入れると、先に表面に火が通ってしまい、中まで火が通る前に煮崩れしまいます。水からゆでることで煮崩れするのを防ぐことができ、表面も中もむらなく加熱でき、柔らかく煮ることができるのです。

お湯からゆでるの葉物野菜など

一方、お湯からゆでる野菜は、土の上に育つブロッコリー、ホウレン草、アスパラガスなどです。温度が低い状態からゆでると沸騰するまでに時間がかかるため、野菜の持つ酵素や溶け出した酸が色や食感を悪くします。加熱時間を短くすることで、色落ちを防ぎ、歯ごたえを残し、栄養成分の流出を防ぎます。

お湯の量の目安は、野菜200gに対して水1ℓ以上、水は野菜の5倍ほど必要です。レシピなどに「たっぷりのお湯でゆでる」と書かれているのは、そういう理由からです。

お湯からゆでるホウレン草や小松菜などの葉菜は、茎から入れます。30秒ほどたったら葉の部分も入れ、1分程度でさっと湯からあげます。ゆで上がりの目安は、根元の部分に少し硬さを感じるくらい。煮すぎると葉が柔らかくなりすぎたり、溶けたりする場合があります。

また、すぐに流水で冷やすと鮮やかな色を保てます。ホウレン草のあくに含まれるシュウ酸などは水に溶けるので、ゆでた後、水にさらせばあく抜きにもなります。今では「時短」や「火を使わない」などのレシピもあり、ホウレン草を電子レンジで簡単にゆでることもできますが、お湯でゆでる方法も理解し、1度はチャレンジしてみましょう。

今回は、ホウレン草をお湯からゆでて作った「ホウレン草と牛肉のゴマあえ」を紹介します。牛肉が加わることでボリュームのあるおかずになります。ゴマの風味が効いてとてもおいしいです。

管理栄養士・舘川美貴子