<鳩屋海苔店(上)>
海苔といえば、各家庭に必ずある食材。特に焼き海苔は、子供の頃から口にするもので、嫌いな人はいないでしょう。日本人の食生活にとけ込んでいます。
しかし、身近すぎるからか、味や質の違いなど、実は知らないことが多いのです。今回は、焼き海苔の秘密に迫ります。
「お海苔好きですか~ァ」。外国人や観光客であふれる築地東通り、鳩屋海苔店本店から今日も元気なバリトンボイスがこだまします。187センチの長身にカーリーヘア。「築地で一番ノリのいいおっさん」の3代目鵜飼友義社長(48)。家業を継いで6年。海苔のPRのため、さまざまな企画を実施し、今では、社長目当てに築地に来る人もいるほどの人気者です。
いつも満面に笑みをたたえる鵜飼社長ですが、海苔の話題になると、目つきが変わります。「海苔は値段に比例する!」。え~!?
海苔には旬がある、ランクがある
ここで焼き海苔の基本です。
- 海苔1枚(全型)のサイズは、原則として縦21センチ×横19センチ。
- 全型10枚を1セットとし、「1帖」と表す。
- 海苔は海産物のため、旬がある。産地によるが、通常11月~3月中旬までつみ取られる。
- 産地、時期、見た目、漁師などによって9ランクに分けられ、問屋値段で1帖200円~1000円もの差がある。
- 「はね」は基本的にはB級品。傷ものを寿司屋がはねた(除いた)ことが由来で味や香りは変わらないものだったが、今では「はね」という言葉が一人歩きしていることも。
普段、私がスーパーなどで購入しているものは、1帖200~300円台の最低ランク。毎日、子供の弁当作りで使うので、とにかく枚数が必要で、質より利便性、全型よりも、半切タイプや3分の1サイズを選んでいました(しかも、ジッパー付き)。
「それなら今度、500円のものを買ってみたらいいですよ。必ず味、香りが違うのが分かります。さらに、1000円以上の海苔は、恐らく食べた事のない風味、何これ~!! なんて、それだけで世界観が変わる。少しのぜいたくで知らない世界に触れることができるんです」と鵜飼社長は力説します。
ただ、値段が高ければいいわけではなく、好みも大切です。青い香りが強いもの、塩味の強いもの…海苔にはそれぞれ、味に特徴があるといいます。スーパーでは開封しての食べ比べはできませんが、築地のような問屋街や海苔専門店では試食ができ、好みの味を見つけられます。
「海苔はメディア!」「海苔は黒い紙媒体!」。
好みの味を見つければ、人に伝えたくなり、贈り物にしたくなる。海苔によって普段の料理がグレードアップし、バラバラだった味も海苔が“媒体”となって一体化してくれる…ノリノリで次から次へと言葉を紡ぐ鵜飼社長のように、海苔に言葉を載せて、誰かに伝えたくなりました。
今回は、栄養価たっぷりな海苔を存分に使ったレシピ「カルシウムたっぷり海苔巻き」を紹介します。
海苔は栄養が豊富な食材です。ビタミンでは、A、B1、B2、Cを多く含みます。ビタミンAは、前駆体であるβカロテンとして、緑黄色野菜に匹敵するほどの量が含まれていいます。ビタミンAは、粘膜や皮膚の細胞の代謝を活発にするため、ウイルス感染を防ぎ、ビタミンCとともに傷の回復を早めます。また、ビタミンB1は糖質の代謝を助けるため、糖質の多いご飯とのりは理想的な組み合わせです。
ミネラルでは、カルシウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛、ヨウ素を多く含みます。カルシウムや鉄分、マグネシウムは、骨や血の材料として、運動時にはしっかり摂りたい栄養素です。ヨウ素は、代謝を高め、成長を促進する働きがあるため、成長期には必須です。
子供のころ、干しのりをストーブ上であぶって食べていた記憶があるが、オール電化でIH調理器になった今、どのようにあぶればいいのか。「フライパンやホットプレートで浅く焼ければいいんですよ」と鵜飼社長。何だ、そうだったのかと目から鱗が落ちた。
一方、ガスは直接あぶれるのかというと、ガス自体に水分を含んでいるため、海苔がしなっとしてしまう。こちらも必ずフライパンの上で浅く焼くといいそうだ。
ただし、しけた海苔をぱりっと“再生”できるのかというと、それは難しい。すでに風味が落ちて味がないから佃煮など、煮るしかない。
【住所】
本店:東京都中央区築地4丁目14-16
新店:東京都中央区築地4丁目10-10
【TEL】
03-6278-7373(平日10:00~17:00)
【営業時間】
通常日:7:00~14:00
休市日:8:30~14:00
年中無休(年末年始休業除く)