嶋野麻美さん(大阪府摂津市)は5年前、新体操選手の長女のケガから「食」を考えるようになりました。新体操界の食生活について考え、実践したことを4回にわたってお届けします。
小学1年から選手クラス
私が「食」に真剣に取り組むようになったのは、長女が小学3年生の時に患った腰椎分離症というケガがきっかけでした。
長女は、2歳半で新体操クラブの体験会に参加し、3歳から一般クラスに入会。小学1年生で選手クラスに合格してから本格的に取り組むようになり、現在中学2年生です。
選手クラスに入会した当初は、柔軟体操はもちろん、美しさを磨くためのバレエレッスンや、前方回転、後方回転のようなアクロバティックな動きの練習、素早い動作の後にもピタリと静止できるようなバランストレーニングなど、お姉さんたちに追いつくよう必死でした。
元々食が細く、やせ形だった長女は食事制限をすることもなく、「食」に対してあまり神経を使うようなことはありませんでした。普段の食事は、日本食中心プラス野菜を多めに、くらいの感覚しかありませんでした。
ただ、標準値を随分下回る体重、アクロバット練習で床に当たる部分、特に洋服で隠れている個所に青タン(内出血)があるということで「虐待ではないか?」と、保健室の先生や保健所の方に頻繁に面接されたことは、今だから言える笑い話です。
より軽く高いジャンプのため、極端な少食に
小学1年生でチャイルドの主要な大会にて上位入賞しました。1年目で結果を残したことがプレッシャーになったのか、「もっとジャンプを高く、軽く見せるために痩せなくちゃ!」「みんな練習後はごはん食べへんらしい」などと、とにかく食べてはいけない、重量の軽いもの、0カロリー食品をせがむなど、心の変化が著しくなってきました。
2年生になると「もっと軽いジャンプを飛ばなくてはいけない。もっと柔らかさを出さないといけない。もっと細く、軽くならなければ…」と口にするようになりました。
ご飯はこども茶碗に半分ほど。野菜はブロッコリーやキャベツなどの葉物に温野菜、トマト、キュウリ。お肉はささみや鶏ムネ肉。魚は塩焼き。脂分をとにかくカットしていました。「たくさん食べることは悪いこと」「油分の多いものは食べたくない」「新体操選手は小食でなければ恥ずかしい、周囲の人から細いね、軽いね、と言われなければならない」と思い込んでいたのだと思います。
この時には気づきませんでしたが、今思うと、そのころの長女は疲れやすく、肌がかさつき、青白い顔色をしていました。
新体操選手向けの栄養資料がほとんどない
3年生の大会前から、娘は「腰がひどく痛む」と言っていたのですが、大したことはない、大会前のハードな練習の疲れだと安易に考えていました。しかし、日に日に痛みは増すばかりで思うように動けなくなり、慌てて病院へ行くと、腰椎分離症との診断でした。前屈系の運動に対して、後屈系の運動をする際に柔軟性が弱かったことも原因の1つかもしれません。
腰椎分離症は、成長期に活発にスポーツをすることで起こる疲労骨折で、原因の1つに栄養不足が挙げられます。十分な練習後、さらに柔軟性を鍛えるための自主練習を重ねたことと、この時期の栄養不足が重なって悪化したものと思われます。
新体操クラブの先生方が治療法や食生活の相談に乗ってくれ、食の講習会も開催するなど親身に対応してくれました。しかしながら調べれば調べるほど、新体操選手の食事法は一般的な大人向けのダイエット法であったり、極端な減量だったりと、成長期のジュニア選手が参考にできるものではありませんでした。
この時、新体操選手向けの食知識の資料がほとんどないこと、栄養指導の教本的なものがないことに直面しました。ならば、自分自身で向き合うしかないと、決意したのでした。
・食アスリートJr.インストラクター、健康食育Jr.マスター、キッズコーディネーションインストラクター。
・大体大健康科学コースでスポーツ医学について学び、中・高等学校1種免許(保健体育)。茨木新体操クラブにて指導補助、食事指導を行っている。
・中学2年の長女、小学校2年の次女は新体操、小学校4年の長男はサッカーに奮闘中。