<キッチンは実験室(4・上):パンが膨らむ理由を探せ>
みなさん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)の「みせす」です。
関東も梅雨明けし、じめじめして気温の高い夏の季節となりました。いろんな菌も発生しやすく、食中毒の原因になりやすい…ならば、良い菌を増殖させればいいのでは!?
そんなわけで、今回はパン作りの実験をしてみましょう。さらに、発酵の待ち時間に、家で作れる「ガム」にトライしてみませんか? 夏休みの自由研究にもぴったりな研究課題になると思います。 (※この実験は小麦を使用します。グルテンはアレルゲン品目の1つのため、アレルギーをお持ちの方はご自身の判断の下、実験してください。)
イースト菌が呼吸する
まずはちょっとした科学実験をしてみましょう。「赤」のコップには砂糖とドライイーストを、「青」のコップには砂糖のみ加えています。そこにぬるま湯(45℃)を加えて混ぜて待つこと10分…するとどうでしょう。
「赤」のコップがモコモコしてきました。においもかいでみましょう。ちょっとお酒くさいにおいがしていますか?
このモコモコした泡、水に溶けている空気は、実は二酸化炭素なのです。これはイースト菌が砂糖を取り込んで、二酸化炭素とアルコールを出す「発酵」という働きによるもの。私たちが呼吸をするとき、酸素を吸って二酸化炭素を出すように、イースト菌も呼吸(嫌気呼吸)をしているのです。
ところで、みなさんはパンを作ったことはありますか? 失敗すると、パンが固くて粉っぽくて全然おいしくありません。そう、ふわっふわなのがおいしい理由。ふわっふわになるのは、空気(二酸化炭素)によってパンが膨らむからなのです。
<家庭でできる実験レシピ:イースト菌の発酵> ●材料 赤…砂糖15g、45℃のお湯 60cc、ドライイースト2g 青…砂糖15g、45℃のお湯 60cc
●実験手順 赤、青の2つのコップを用意して中身を入れ、箸で混ぜる。10分たったら観察する。
なんでパンをこねるの?
さて、ここでまた1つ実験です。発酵したイーストを箸でぐるぐる混ぜてみると、せっかくの泡がつぶれてしまいます。これではパンが膨らみません。ここで助けてくれるのが「グルテン」です。グルテンは小麦に含まれるタンパク質。粘性のある「グリアジン」と伸展性のある「グルテニン」が水の中で合わさると、粘弾性のある「グルテン」になります。
パンをよくこねるのは、このグルテンを出すためです。こねればこねるほどグルテンが出て、きめ細やかなパンになります。一方、フランスパンを作るときにあまりこねないのは、きめ(気泡)を粗くするため。またバターなど、水と混ざり合わない性質の油を入れるのは、グルテン形成を阻止するためです。
ライ麦パンにはグリアジンがないので、グルテンができず、どっさりとしたパンになります。また、塩を入れるのはグリアジンが水と混じり合わない性質(疎水性)を緩和し、生地をまとまりやすくするためです。
ちなみに、グルテンは焼くと硬くなる性質があり、焼き麩になります。発酵によって生じたふわふわした空気を包み込み、ガードする作用があります。グルテンは小麦特有のタンパク質であり、米にはないので、100%米粉のパンは、膨らみづらいといわれています。
最後に、家庭でできるグルテンガム作りのレシピも載せておきます。夏休み期間中、家族でトライしてみてください。
<家庭でできる実験レシピ:グルテンガム作り> ●材料 強力粉200g、水140cc、塩10g
●作り方 ①ボールに材料を入れて、ベタベタしなくなるまで15~20分こねる。 ②常温で1時間寝かす。 ③水をはったボールでもみ洗いする。水が濁ったら変えて、透明になるまで洗えば、出来上がり。
・子ども向け食育ボランティア団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師
・東京薬科大生命科学部卒/群馬大学大学院修士(保健学)。中・高校教諭一種免許状(理科)取得
・国際薬膳師・国際薬膳調理師・中医薬膳師。キッズキッチン協会公認インストラクター。エコ・クッキングナビゲーター