塩を加える理由
また、卵焼きを作る時に塩をひとつまみ、卵豆腐や茶碗蒸しには塩をしっかり入れることにも理由があります。卵液は薄くしすぎても固まらず、大体30%までと言われています。しかし、茶碗蒸しを作る時の卵濃度は20~25%のため、塩を利用して凝固させます。食塩に含まれるナトリウムイオンと卵のタンパク質が結合してゲル状になるのです。
牛乳にも固める作用
また、牛乳にも固まる作用があります。牛乳にはカルシウムが含まれていて、これは塩のナトリウムと同じ陽イオン。イオン結合によって固まりやすくなります。カスタードプリンを作る時、卵と牛乳を加えるのは、卵が熱で固まるのに加え、牛乳のカルシウムイオンで固まりやすくするためです。
砂糖は固まらない?
一方で、砂糖を入れると固まりにくくなります。砂糖が水と結びつく親水性の働きを持っていて、卵が固まる温度(タンパク質凝固温度)を上げるからです。具体的には砂糖を入れない卵は70℃付近で固まりますが、多めに砂糖を入れると85℃付近になります。つまり、砂糖を入れるほど柔らかくなり、弾力性をもち、ふんわりと固まるのです。お弁当の甘い卵焼きがふんわりなのは砂糖の力です。
温度上昇と固まり具合
卵が固まる温度は、食感に影響を与えます。
68℃のお湯に30分程度加熱させる温泉卵のように、温度上昇が緩やかだと滑らかで軟らかいゲルとなります。温泉卵は卵白が柔らかいゼリー状、卵黄はねっとりしていますね。
茶碗蒸しやプリンを作る時も、舌触りを良くするために、ゆっくりと温度を上げていきます。温度が80℃を超えると、ほぼ卵のタンパク質が固まり、さらに加熱して100℃に近づくと、そこに含まれる水分が気化して、気泡の中に跡が残ります。この跡が「す」です。
次のページ「す」を立てずに茶碗蒸しを作るポイント