<キッチンは実験室(36):麹甘酒の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。東京では桜が開花しましたが、まだ朝晩冷え込む日もあります。今回は、そんな季節にぴったりな「甘酒」についての科学です。じっくりとおいしく作れるレシピとともにお届けします。

子どもも飲んでいいの?

甘酒と聞いて、「酔っ払う?」「子どもも飲んでいいの?」「砂糖が入っているの?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。実はこの甘酒、原料によって2種類に分かれているのはご存じでしたか?

(1)「米麹」由来

米麹とお米を熟成発酵して作られるもの。アルコール発酵しないため、アルコール分は0%でソフトドリンク扱い。お子さまが飲んでも問題ありません。お米を噛んだ時に口の中で広がる甘さと同じ天然の甘さです。また、発酵の副産物であるアミノ酸、ビタミン、酵母などの栄養素も含まれます。

(2)「酒粕」由来

日本酒のもろみ(蒸した米、水、麹を混ぜて糖化と発酵を行ったもの)を絞った固形物のカス(酒粕)をお湯で溶き、砂糖を加えたもの。アルコール分が若干残っている酒米を醸造する時に25%の酒粕が取り出せます。酒粕自体には、100gにつき8%のアルコール分が含まれており、車を運転する際に気を付けるよう言われるのは、酒粕を加熱して甘酒を作る時にアルコール分が残っている可能性があるため。米麹由来の甘酒と同じく、アミノ酸、ビタミンの栄養素が含まれます。

化学反応によって生じる違い

2種類の甘酒が出来るのは、化学反応の違いによるものです。

(1)米麹由来=(A)麹菌による糖化(麹カビが作り出した酵素の作用による糖化)
(2)酒粕由来=(B)酵母菌によるアルコール発酵(酵母カビによるアルコール発酵)

米麹甘酒は、(A)の麹菌による糖化反応によって甘くなります。そのまま放置しておくと、今度は米麹に含まれる酵母菌がその甘い糖を元にアルコール発酵を起こし、(B)の状態になるのです。パンの発酵と同じように、発酵しすぎるとアルコールとなり、その発酵が進んだ状態が日本酒を作る原理。そこで出来た日本酒を絞って出来たカスが酒粕です。

つまり、麹菌(が生み出す酵母)によってごはんのでんぷんが分解されて甘くなり、甘い糖を餌にして酵母菌がアルコール発酵して日本酒・酒粕ができる仕組み。ちなみに日本酒の甘口、辛口は、最後のアルコール発酵の熟成度でも変わると言われています。

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