<キッチンは実験室(50・下):エビの科学>
ここまで、「加熱するとエビが赤くなる理由、買うなら頭付きがいいのか」といったエビの科学について紹介してきましたが、ここからはエビをおいしく食べる調理の工夫を紹介していきましょう。エビの天ぷらを作る時、背中が丸まってしまったことはありませんか? まっすぐ伸びたエビ天を作るには、あるポイントがあります。
エビには、背中が丸まるように、腹側に強力な筋肉の繊維があります。加熱すると筋肉が固まり、背中もぎゅっと丸まってしまうので下ごしらえ時にその筋肉の繊維を断ち切っておくことが大切です。
<エビを真っすぐにする下ごしらえ>
・背わたをしっかりとる
・腹側に4~5箇所、5mmの切り込みを入れる
・エビの両側を持って身をそらせて伸ばして、繊維(筋)を切る(プチプチっとした音がする)
捨てないでエビの殻!だしからカルシウムまで
捨ててしまいがちなエビの頭や殻。しかし、しっかりと炒めると濃厚なだしがとれるので、捨てずに使いましょう。
スープ専門店などで有名になった「エビのビスク」をご存じでしょうか。ビスクとはフランス料理の一種で、カニやエビなどの甲殻類を煮てすりつぶし、丁寧に漉して仕上げたスープのことです。
エビには、うま味成分のグルタミン酸(100g中120mg)とイノシン酸(100g中90mg)が含まれており、濃厚なだしがとれます。また魚介類の甘み成分のタウリンは、エビの本体よりも殻と頭の部分に多く含まれています。
そんなエビの殻をからいりして生臭さをとり、香ばしい香りを出してからすり鉢などでつぶし、水と一緒に15分煮込んだらエビの濃厚だしが出来上がります。大きめの刺身用生エビ4尾をからいりするだけでも、1リットル程度のだしをとることができます。刺身だけではもったいないので、ぜひだしにも利用してみてください。
殻を粉にして乾燥、エビせんにも
だしのほか、エビの殻を乾燥させて粉にして使う方法もあります。その1つがエビせんです。
エビせんの歴史は100年以上前に、某かまぼこ業者がエビのすり身を使って作ったことから始まります。今は色々な商品が出回っており、エビの殻まで丸ごと入っているものもありますね。
エビの殻にはカルシウムや食物繊維のキチン質も含まれています。エビの殻に片栗粉をまぶして油で2~3分揚げる唐揚げもおすすめです。
作ってみよう!干しエビで「エビのビスク」
今回は、「エビのビスク」を簡単に自宅で作るレシピを紹介します。薬膳的にはカラダを温める作用があるので、肌寒い日にホッと体が温まるスープを作ってみてはいかがでしょうか。
<材料>
干しエビ 50g
クルミ 30g
トマト缶 1缶
タマネギ 1個
小麦粉 大2~3
ショウガ 1片
ニンニク 1片
水 200cc
牛乳 300ml
バター 5g
<作り方>
(1)タマネギはスライスに、クルミはからいりしておく
(2)ニンニク、ショウガ、干しエビを炒める(香りが出るまで)
(3)タマネギと小麦粉を入れてしんなりするまで炒める
(4)(3)とトマト缶、クルミをすべてまとめてミキサーにかける
(5)水を入れてぐつぐつ煮込む
(6)とろみに応じて牛乳を入れてお好みでパセリを散らす