<アスレシピ特派員紹介>
アスリートフードマイスターや野菜ソムリエの知識を持つ、特派員・認定アンバサダーの長見恵さん。レシピを考える上で大切にしていること、お子さんへの声掛けで気をつけていることなどを聞きました。【聞き手=アスレシピ編集部】
パパッと作れて栄養も摂れるレシピ
新型コロナウイルスが広がる前は、電車通勤をしていたという長見さん。朝は子どもの朝練に合わせて4時起きでお弁当や朝食作り、合間に洗濯と自分の身支度を整え出勤する毎日で、献立を考えるのはもっぱら電車の中だったとか。
「ネットでささっとレシピを検索し、その日の献立を考えていました。その時欲しかったのが、家にあるものでパパッと作れるレシピ。買い物の時間も惜しいので、少ない材料で作れることもポイントです。アスレシピに投稿するレシピは、そのポイントを押さえながら、成長期の子どもに摂らせたい栄養素が含まれるようにと考えています」。
ご実家は農家。歩いて行ける距離に暮らすようになり、旬の野菜が身近にある環境になりました。
「旬の野菜は目立つところに置かれていて買いやすいですし、栄養素も豊富で価格も安いといいことばかり。でも、使い慣れないと調理法がわからず、敬遠しがちですよね。レシピを紹介することで、手に取るきっかけになればと思っています」。
現在は口コミで、主にスポーツを頑張るお子さんの保護者に食事カウンセリングを行っている長見さんですが、相談の中でも野菜が苦手なお子さんがとても多いと感じているそうです。
「お子さんが食べないと、だんだん食卓に出さなくなったりしますよね。でも出さなければ、食べられないまま大人になってしまうかもしれません。野菜は、体に必要な栄養素が多く含まれているので、できれば意識してたくさん食べてもらいたいと思います。この野菜がダメだったら、同じような栄養素を含む別の野菜に変えてみるとか、調理法や味付けを変えてみるなど、いろいろチャレンジしてみてほしいです。お母さんの料理がきっかけで、お子さんの食べられる野菜が増えたら嬉しいことですよね」。
食事だけでケガは防げない、子どもの一言に気付き
息子さんは中学高校とサッカーを頑張ってきました。現在は高校3年生で、大学での競技継続を視野に受験勉強を頑張っています。
「部活では、中1の時に栄養講座がありました。『この学校でサッカーがしたい』と受験をして入ってくるメンバーも多かったので、もともとお子さんも親御さんも食事への意識が高く、強くなりたい、体を作りたいという思いが強かったように思います」。
中学時代の監督は「食べることもトレーニング」という考え。折に触れて食事の大切さを説き、用意してくれる保護者にも感謝するようにと話してくれていました。
「中学生の多感な時期に、親ではない大人に諭してもらえたことが良かったと思います。部の仲間同士でも『あれがいい』『これがいい』と話す機会が多く、食べ物を選ぶ目が養われていったようです。仲間の影響力って、すごく大きいですね」。
環境にも恵まれ、親子で食事にも力を入れてきましたが、防げなかったのがケガでした。ある時、息子さんがつぶやいた一言にハッとしたと言います。
「『こんなに食事に気をつけてくれているのに、ケガをしてごめんね』と。それを聞いて、もう少しわからないようにやってあげるべきだったな…と反省しました。ケガに良いと思っていろいろ作っても、食べて食べてと言うことで、本人にとってはプレッシャーになる場合もあります。栄養の知識を自然に身につけるために、小さい頃から会話に盛り込むことは良いと思いますが、ケガをして気持ちが落ち込んでいる時は、考えを見せずにさりげなく出すことが大切だと学びました。もちろん、子どもの方から『カルシウムを摂ったほうがケガにいいと思って、チーズを買って食べたよ!』などと話してくれた時はしっかりほめますが、日々の食卓ではあえて何も言わないよう心がけるようになりました」。
ケガをしてしまった時の食事で気をつけていたことは。
「残念ながら、これだけ食べれば早く回復するという魔法の食材はないので、できるだけ多くの食材を摂らせながら、ケガの回復を助ける栄養素を増やすようにしました。ただし、1回量を多くするのではなく、回数を増やすんです。栄養素はほかのものと一緒になることで吸収率が上がります。たとえば骨折なら、骨を作る栄養素(カルシウム)と、吸収を高める栄養素(ビタミンDやビタミンK)がその関係になります。出会う機会を増やすようなイメージですね」。
手軽な方法としておすすめなのは、お米にプラスαすること。
「お米を炊く時に雑穀を混ぜてビタミンやミネラルを摂ったり、栄養素を加えられる便利な商品もありますよね。我が家では何種類か買っておいて、体調や状況に応じて足しています。お米なら毎日食べるので、手軽に栄養を強化できます」。
骨の成長を考えて、日々ローテーションして出しているという食材も教えていただきました。
「カルシウム源として、牛乳、チーズ、ヨーグルト、納豆、木綿豆腐、厚揚げ、シラス、干しエビ、ゴマ、乾燥ワカメ、切り干し大根、ヒジキ、小松菜。吸収を高めるビタミンDを含むものとして鶏卵、サケ、干しシイタケ、マイタケ。同じくビタミンKを含む納豆、キムチ、ブロッコリー、キャベツ、ニラ、ホウレン草、小松菜。これらをいろいろ組み合わせるようにしています」。
お母さんたちも頑張り過ぎないで
食事カウンセリングやご自身の経験も踏まえて思うのは「お母さんたちも頑張り過ぎないで」ということ。
「お子さんの体を考えて、忙しくても『手作りが一番』と無理をして頑張ってしまうお母さんが多いのではないでしょうか。でも私は、お弁当やお惣菜を買う日があってもいいと思うんです。ただ、それだけで終わらせず、サラダや汁物を足すなど、足りない栄養素を補う工夫をすれば十分。心に余裕があれば子どもの些細な変化に気付けますし、時間に余裕もできて、お母さんも明るくいられます。お母さんが明るいと、食卓の雰囲気も明るく楽しくなって、お子さんの食が進むきっかけになるかもしれません」。
そしてもうひとつ、お子さんがスポーツを卒業しても、学んだことを続けてほしいとも。
「『受験生に良いレシピを考えて欲しい』という声をいただく機会が増え、勉強中なのですが、スポーツで必要とされる『集中力アップ』や『持久力アップ』など、重なる部分が多いことに気付きました。お子さんがいつか経験する受験や、社会人になって仕事をしていく上でも役に立つことだと思いませんか。どんな場面でも、食べたもので体が作られることには変わりありません。この知識を得たことで、きっと人生が豊かになるはず。ぜひご自身や家族の一生の健康作りに、引き続き役立てていってほしいなと思います」。