「食物繊維」と聞くと、便秘予防など身体にいいイメージがある人が多いと思いますが、どんなものか、ご存じですか?
実は、糖質と同じ成分でできている炭水化物の一部で、人間の消化酵素で分解できないものをいいます。栄養にならない「食物のカス」のような存在ではありますが、さまざまな機能性があり、健康の維持に役立っています。
食物繊維には水に溶けない「不溶性」のものと、水に溶ける「水溶性」のものがあり、それぞれの働きが異なります。
不溶性食物繊維には、野菜の皮や軸に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニン、エビやカニなど甲殻類の殻に含まれるキチン、キトサンなどがあり、便量を増やし、腸管を刺激して便秘を改善します。また、ダイオキシンなどの毒素を吸着し、便と一緒に排出してくれます。
水溶性食物繊維には、果物などに含まれるペクチン、こんにゃくに含まれるグルコマンナン、海藻などに含まれるアルギン酸ナトリウム、寒天の主成分のアガロース、穀類や果物に含まれる難消化性デキストリン、人工に合成されたポリデキストロースなどがあります。
これらは、おなかの中で膨らむので、食べ過ぎを防ぐ、血糖値の上昇をゆっくりにする、コレステロールの吸収を防ぎ排泄を助ける、血圧を下げる、腸内細菌を増やし水素ガスを発生させ、抗酸化作用を高めるなどの作用が報告されています。ただし、摂り過ぎるとカルシウムなどミネラルも吸着して排出してしまうというデメリットもあります。
平成27年度国民健康・栄養調査の結果では、食事摂取基準の目標量に比べ、どの年代でも食物繊維の摂取量が不足しています。精製されていない穀類、野菜や海藻、果物をしっかり食べ、サプリメントや健康食品ではなく、食べ物から摂ることをおすすめします。【管理栄養士・今井久美】