脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます (不飽和脂肪酸は酸化しやすい、加熱料理はオリーブ油がおすすめ)

 さらに、不飽和脂肪酸は炭素の二重結合の周りの構造の違いで、「シス型」と「トランス型」の2種類に分けられます。

 シス(cis)は“同じ側の”という意味で、脂肪酸の場合は、水素原子(H)が炭素(C)の二重結合を挟んで同じ側についていることを表しています。トランス(trans)は“横切って”という意味で、脂肪酸の場合は、水素原子が炭素の二重結合をまたいで反対側についていることを表しています。

 オリーブ油に含まれるオレイン酸、魚類に含まれるDHA、EPAなど天然の不飽和脂肪酸のほとんどは、炭素の二重結合がすべてシス型です。これに対して、トランス型の二重結合が1つ以上ある不飽和脂肪酸を「トランス脂肪酸」と呼んでいます。

 トランス脂肪酸は、摂り過ぎた場合の健康への悪影響が注目されています。摂取量が多いと、血液中のLDLコレステロール(悪玉)が増え、HDLコレステロール(善玉)が減るなど、心臓病などの動脈硬化症が増加することが報告されています。

トランス脂肪酸を含む食品

 トランス脂肪酸を含む食品は以下のものがあります。

工業的に作られるもの
 マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子。揚げ物など高温処理した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれています。

天然に含まれるもの
 牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が含まれています。

摂取する必要性がない脂肪酸

 2003年に世界保健機関(WHO)は、1日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量を、最大でも総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告しています。日本人が1日に消費するエネルギーは平均で約1900kcalなので、平均的な活動量の場合、1日に摂っていいとされる量は約2g未満になります。

 実際のところ、日本人の1日当たりのトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー摂取量の0.6%程度。しかし最近の研究では、若年層や女性などに、摂取量が1%を超える集団があると報告されています。

 消費者庁では、トランス脂肪酸を含む栄養成分に関する情報が、販売に供する食品の容器包装、事業者のホームページ、新聞広告等を通じて広く開示され、消費者の適切な食品選択につながることを期待し、2011年2月に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を示しています。

 トランス脂肪酸は摂取する必要性はないため、食品表示を確認して、できるだけ摂らないようにしましょう。

※参照:消費者庁「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針の概要」

【管理栄養士・今井久美】