ビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保ったり、暗い所でも目が慣れて見えるようになる視覚の暗順応に関わったり、骨や神経の発育に関わったりとたくさんの働きがあります。

 化学的にはレチノイドと呼ばれる脂溶性のビタミンで、レチノール、レチナール、レチノイン酸に分類されます。また、レチノール、レチナール、レチニルエステル、βカロテン、βクリプトキサンチンなど約50種類もの成分が、体内でビタミンAに変わり、その働きをしています。

 動物性食品からは主にレチニルエステルとして、植物性食品からはカロテノイド(βカロテン、αカロテン、βクリプトキサンチン)として摂取され、ビタミンAのレチノールに変わります。

レバーなど動物性のビタミンAの過剰摂取に気を付けましょう
レバーなど動物性のビタミンAの過剰摂取に気を付けましょう

 よくビタミンAを含む動物性食品として、レバーやウナギ、アンコウの肝、ギンダラ、ホタルイカなどが挙げられますが、細かく言うと、レチニルエステルを含んでいるもの。しかし、摂り過ぎると頭痛、筋肉痛、脱毛、皮膚の表面がふけのようにはがれるといった過剰症を起こします。妊娠初期に大量摂取が続くと、奇形児が生まれる危険性があります。レバーを週に何度も食べるようなことはしないで、サプリメントを利用する場合も容量を守りましょう。

 植物性食品でビタミンAを多く含むものとしては、モロヘイヤ、ニンジン、ホウレン草、春菊など緑黄色野菜が挙げられます。カロテノイドという色素成分が“ビタミンAの素”ですが、こちらは必要な量だけ体内でレチノールに変わるため、過剰症の心配はありません。

 一方、体内でビタミンAに変わらないカロテノイドもあります。リコペン、ルテイン、ゼニアキサンチンなどです。カロテノイドは強い抗酸化作用や免疫を上げる働きがあるので、脂溶性の特性を生かし、炒め物など油を使った料理や、バターやドレッシングと一緒に食べると吸収されやすくなります。
【管理栄養士・今井久美】

参照:日本人の食事摂取基準2015年度版