ビタミンB1は「チアミン」という化学名で、ブドウ糖の代謝と分枝アミノ酸(BCAA=バリン、ロイシン、イソロイシン)の代謝に必要な水溶性のビタミンです。

 アスリートはたくさんのエネルギーを消費するため、エネルギー源である糖質の必要量が多くなります。それに比例して、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1の必要量も多くなります。

 ビタミンB1は、豚肉やその加工品であるハム類、玄米やライ麦パンなど精製されていない穀類、ウナギやタイなど魚類、イクラやタラコといった魚卵、大豆やエンドウ豆など豆類に多く含まれています。主食を増やす場合は、雑穀を混ぜたり、玄米でなくても胚芽米を利用したり、豚肉や大豆製品をおかずに使用するなどを心がけると良いでしょう。

 欠乏すると神経炎や脳障害が起こりますが、欠乏症として、かっけ(全身の倦怠感、食欲不振、足のむくみやしびれ)やウェルニッケ・コフサコフ症候群(眼球運動障害、運動失調、意識障害が特徴)があります。インスタント食品中心の食事や、おかずが少なく主食(ご飯、パン、麺類)ばかりに偏った食事、清涼飲料水をたくさん飲むなど糖類の摂取量が多い人、アルコールを多量に飲む人には起こりやすいといわれています。

 過剰症は、頭痛、いらだち、不眠、皮膚炎などの症状がありますが、通常の食品をとっている人では過剰症の報告はありません。

 生の魚介類には、ビタミンB1を分解するチアミナーゼという酵素が含まれているものがありますが、チアミナーゼは加熱することで活性がなくなります。通常、刺身などで食べる筋肉部にはチアミナーゼは少なく、内臓に多く含まれます。珍味などで内臓をたくさん食べる場合はビタミンB1欠乏が起こる可能性があるため、注意が必要です。【管理栄養士・今井久美】