アスリートは、鉄欠乏性貧血、希釈性貧血、スポーツ貧血と貧血のリスクが高く、運動により鉄の需要が増えることはよく知られています。特に女性は、月経が始まると鉄損失量が増えることから、さらに貧血のリスクが上がります。
鉄は、ヘモグロビンや酵素の構成成分であり、欠乏すると貧血だけでなく、運動機能、認知機能の低下を招きます。症状では、無力感、食欲不振などが見られます。
若い女性を対象とした研究で、鉄欠乏状態ではカルシウム摂取量が適正であっても、骨吸収(骨が壊れる)が高まったという報告もあるため、骨の健康のためにも鉄が必要です。
食品中の鉄は、タンパク質と結合したヘム鉄と、結合していない非ヘム鉄に分けられます。ヘム鉄は、そのままの形で吸収されますが、非ヘム鉄は3価鉄イオン(Fe3+)の形ではほとんど吸収されず、アスコルビン酸(ビタミンC)などの還元物質により還元されて2価鉄イオン(Fe2+)になり、吸収されます。
鉄を多く含む食品として、ヘム鉄ではレバー、赤身肉(ひれ、もも)、赤身魚(カツオ、マグロ、イワシ、サバ)、非ヘム鉄ではグリンピース、海藻類(ノリ、コンブ、ワカメ、ヒジキ)、チョコレート、ココアなどがあります。
同時に摂取すると、鉄の吸収率を上昇させる食品としてタンパク質、アミノ酸、アスコルビン酸がありますが、反対に鉄の吸収を抑制する食品として、タンニン、シュウ酸、フィチン酸などがあります。タンニンは緑茶、コーヒー、紅茶に、シュウ酸はタケノコ、ホウレン草などの灰汁の成分、フィチン酸は玄米や豆類に多く含まれます。
鉄の吸収率は約15%と低いため、吸収率を上げるためには食べ合わせにも注意が必要です。特に非ヘム鉄は、肉や魚などタンパク質の多い食品や、野菜や果物などビタミンCの多い食品と組み合わせるようにしましょう。
参照:日本人の食事摂取基準2015年度版
【管理栄養士・今井久美】