前回に続いて、ドーピングについてのお話です。まずは2つの例を紹介します。
薬剤を使用していないにも関わらず、ドーピング検査で陽性だった選手がいました。尿検査で、気管支炎薬に使用されている成分が検出。調査の結果、食肉に薬剤の成分が残留していたのだろうという結論でした。家畜が病気にかかって薬を使うこともあるので、このようなことが起こったということです。また海外では、食肉の肥育目的で家畜に禁止物質を投与することもあります。
また、花や葉、種や茎から抽出される「CBDオイル」は、種から抽出される「ヘンプオイル」同様に、美容や健康維持に関心の高い人に使用されているオイルです。そのまま飲んだり、オリーブオイルの様にサラダにかけて食べたりしますが、「CBDオイル」からドーピングに違法な成分が検出されたという報告もありました。
現在では、麻薬成分が含まれないCBDオイルは禁止薬剤からは除外されましたが、体に良いと思って食べる食材にもこのような危険性があるため、可能な限り含有成分を確認してから食べる必要があります。
これでは、いくら食べ物に気をつけてもドーピング検査が陽性になるリスクは避けられないと、心配になる方もいるのではないでしょうか。
ただ、ドーピング検査で陽性になったとしても、すぐに違法薬剤を使用したことにはならず、ヒアリングなどの調査が行われます。その時に原因を究明できるように、食事記録をつけることをおすすめめします。
食べたものを食材ごとに細かく記入することが理想ですが、これは大変な労力が必要で、現実的ではありません。料理名だけでも手帳やスマートフォンに記録しておくと、使用していた食材を思い出しやすいでしょう。
トップアスリートは、パフォーマンス向上のためだけでなく、ドーピング違反にも気を付けて薬や食べ物を選ぶ必要があります。逆に言えば、食事に無関心では、トップアスリートになるのは難しくなります。今から、食意識を高く持つようにしていきましょう。
【管理栄養士・今井久美】