昨今、食肉などに付着して食中毒を起こす細菌の中に、抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性(AMR)を持つものが見つかり、感染の問題が世界中で深刻化しています。
日本でも生の鶏肉の約半数から薬剤耐性菌が検出されたとの報告があり、感染を防止するためには十分に加熱調理するなど、注意が必要です。
薬剤耐性菌に感染すると、抗菌薬による治療が難しく、体力がない病人や高齢者の場合、重症化する危険も伴います。また、菌によっては食べた人の腸に留まり薬剤耐性菌が増える危険性や、そこから感染拡大につながることもあります。
しかし食中毒を予防することで、薬剤耐性菌感染のリスクも回避できます。
国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが行なった調査で、20~60代の男女308人のうち、4割が食中毒を経験したことがある(病院で診断された場合だけでなく、自己判断も含む)と回答しています。それほど食中毒は身近であり、家庭内での衛生対策についても「芯まで火を通す」「肉の調理前後にまな板や包丁を洗う」「まな板や包丁を他の食材と分けている」など、広く知られていることがわかりました。
食中毒の菌は高熱に弱く、カンピロバクターは75℃以上で1分以上加熱することで死滅することがわかっています。鶏肉は芯までしっかり火を通し、白くなっていることを確認しましょう。肉類をあつかう場合には、人の手やまな板などの調理器具を介して別の食材に菌が付着することがないようにすることが大切です。加熱前の食肉は、生で食べる野菜などと接触しないようにしましょう。
なお「酒をもみ込む」は間違った情報で、飲酒用のアルコール濃度では不十分です。
病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど食中毒を起こす菌が食肉に付着していても、臭いや見た目の変化はありません。
新鮮な鶏肉であっても食中毒を起こす可能性があります。そのことを約9割の人が自覚している一方、薬剤耐性菌が鶏肉についていることを知っているのはわずか33.8%でした。