2020年4月から「日本人の食事摂取基準」が2020年度版に改定されます。食事摂取基準とは、厚生労働省が示す「健康な個人及び集団を対象として、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準」です。

「日本人の食事摂取基準」は5年ごとに改訂されており、3月まで適用されるのは2015年度版。2020年度版は4月1日から2025年3月31日まで5年間活用されます。

成長期年代も対象となり、エネルギー摂取基準も若干、数値が変わります。アスリートに対しては、必要エネルギーやタンパク質などはアスリート用の算出方法がありますが、その他のビタミン、ミネラルの必要量は、この食事摂取基準を参考にすることになります。

今回の改定で、小児について大きく変更された点は、「食塩相当量(ナトリウム)の目標量が下がったこと」「飽和脂肪酸、食物繊維、カリウムの目標量が3歳から定められたこと」です。幼少期からの食事の嗜好(しこう)や食習慣が、成人期の生活習慣病に大きく関わっています。

そのため、今回の改訂では

幼少期から薄味になれる
野菜類をしっかり食べて食物繊維やカリウムの摂取量を増やす
肉の脂身やバター、ホイップクリームなどに多い飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぎ、高血圧、動脈硬化を予防する

といったことの重要性が強調されました。

学校給食については、食事摂取基準に基づいて文部科学省が「学校給食摂取基準」を定めています。小学生・中学生の食事調査結果では、ほとんどの生徒が食塩の目標量を超えて摂取しており、小学生よりも中学生の方がビタミン、ミネラルの不適合率が高く、特にカルシウムと鉄では不適合率が50%を超えていると報告されており、今回の改訂によって食事の嗜好が変わることも期待されています。

【管理栄養士・今井久美】

<主な改定のポイント>
※厚生労働省HP「日本人の食事摂取基準」策定検討会の報告書を取りまとめより抜粋(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

活力ある健康長寿社会の実現に向けて
・きめ細かな栄養施策を推進する観点から、50歳以上について、より細かな年齢区分による摂取基準を設定。
・高齢者のフレイル予防の観点から、総エネルギー量に占めるべきたんぱく質由来エネルギー量の割合(%エネルギー)について、65歳以上の目標量の下限を13%エネルギーから15%エネルギーに引き上げ。
・若いうちからの生活習慣病予防を推進するため、以下の対応を実施。
 -飽和脂肪酸、カリウムについて、小児の目標量を新たに設定。
 -ナトリウム(食塩相当量)について、成人の目標量を0.5g/日引き下げるとともに、高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防を目的とした量として、新たに6g/日未満と設定。
 -コレステロールについて、脂質異常症の重症化予防を目的とした量として、新たに200 mg/日未満に留めることが望ましいことを記載。

EBPM(Evidence Based Policy Making:根拠に基づく政策立案)の更なる推進に向けて
・食事摂取基準を利用する専門職等の理解の一助となるよう、目標量のエビデンスレベルを対象栄養素ごとに新たに設定。