<健康診断の数値の見方>

血液検査の脂質の数値は、動脈硬化と関連があることはよく知られています。コレステロール値が高いことばかり気にしがちですが、コレステロールは細胞膜や血管壁、ホルモンの材料として必要なものなので、低過ぎるのも問題です。なお、脂肪は水に溶けないため、血液中ではタンパク質と結合したリポタンパク質という状態で存在します(基準値は日本人間ドック学会HP参照)。

総コレステロール(TC)

基準値:140~199mg/dL

コレステロールや中性脂肪の総量。栄養状態の指標で、高い場合はエネルギー過剰、低い場合はエネルギー不足を表します。総コレステロールが高くても総タンパクやアルブミンが低値の場合、エネルギー不足によって肝臓でコレステロールの合成が亢進(こうしん)している場合があります。

LDLコレステロール(LDL-C)

基準値:60~119mg/dL(120~139mg/dL=境界域高LDLコレステロール血症)

「悪玉コレステロール」と言われ、食事由来よりも肝臓で作られるものが8割を占めます。摂取エネルギー過剰、飽和脂肪酸の摂取量が多い、糖尿病、腎臓病、甲状腺機能低下症などで上昇します。またストレス過多でも、肝臓でのコレステロール合成が亢進するため、数値が上がります。

食事量が少なく、タンパク質や脂質の摂取量が不足して低栄養の場合や、肝臓の機能低下、甲状腺機能亢進症の場合は低くなります。LDLコレステロールが低く、アルブミンも低い場合は肝臓の機能低下、または栄養不足の可能性があります。

「悪玉」と言われるように、数値が高いと動脈硬化のリスクが高いと思われていますが、実は専門家の中でも意見が分かれています。日本動脈硬化学会(注)は「LDLコレステロールが高い場合、リスクが高い」と積極的に下げるよう主張する一方で、日本脂質栄養学会は「LDLコレステロール値と動脈硬化とは関連しない」と下げる必要がないとしています。栄養士としては、脂質の比率などバランスが大事だと考えます。

HDLコレステロール(HDL-C)

基準値:40mg/dL以上

「善玉コレステロール」と言われ、血管にあるLDLコレステロールを肝臓に戻してくれる働きがあります。HDLコレステロールが低い場合、動脈硬化のリスクが上がります。

運動不足、肥満、喫煙など生活習慣によりHDLコレステロールが下がるため、この数値が低い人は生活習慣を見直し、適度な運動(特に有酸素運動、30分程度のウオーキングが有効)、減量、禁煙に努めましょう。

中性脂肪(TG)

基準値:30~149mg/dL

食事由来の脂質は主に中性脂肪です。血液中のエネルギー源であり、食事によって数値が変動。糖質やアルコールの過剰摂取、ジュースや果物の摂り過ぎなどで数値が上昇します。エネルギー不足の場合は低くなります。

内臓脂肪と関連があり、中性脂肪だけでなくγ-GT(γ-GTP)も高値の場合、脂肪肝や内臓脂肪蓄積過剰が疑われます。糖質やエネルギーの摂取量の評価の指標になります。

NonHDLコレステロール

基準値:90~149mg/dL(150~169mg/dL=境界域高nonHDLコレステロール血症)

LDLコレステロールや中性脂肪、レムナント(リポタンパク質が分解されてできるカス)などを含む動脈硬化のリスクを総合的に評価する指標です。高いと動脈硬化のリスクが高いと判断されます。

脂質の数値は、食物繊維の摂取不足やn-3系脂肪酸(EPA、DHA、αリノレン酸)の摂取不足でも悪化します。食事量や内容を評価する指標として、脂質の数値も参考にしてください。

※注=日本動脈硬化学会は血清中のLDL-C値を求める方法として、直接測定法ではなく「Friedewald式」を推奨していることからも見解が分かれている。空腹時の採血で中性脂肪値が400mg/dL未満である場合が対象。
Friedewald式=TC-HDL-C-TG/5(TG<400mg/dLの場合に適応)

【管理栄養士・今井久美】