<セロトニン(下)>

精神を安定させ、 「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、材料であるトリプトファンをたくさん摂取したからといって増えるわけではありません。セロトニン合成には、腸内細菌も大きく関与しています。

トリプトファンはアミノ酸なので、代謝にはビタミンB6をはじめ、葉酸やナイアシンなどのビタミンB群が必要です。これらのビタミンは、腸内細菌によって作られます。

脳内に存在するセロトニンは実はわずか

実は、脳内に存在するセロトニンはわずかな量しかなく、実際にはセロトニンの約90%は腸管に存在します。腸内のセロトニンは脳に入ることができず、腸のぜん動運動を促す働きを持ちます。ただし、セロトニンが不足して腸の動きが悪くなり、便秘になると、腸内で悪玉菌が増えて腸内細菌が乱れます。結果として、脳内のセロトニンも減ってしまうのです。

逆に言うと、脳内のセロトニンが減ると、ストレスに対する抵抗力が低下し、自律神経が乱れます。そうなると、副交感神経に支配されている消化管運動も低下し、腸内のセロトニンも減るという「負のスパイラル」に陥ります。このように脳内と腸内のセロトニンはお互いが影響、連携しあっているのです。

腸が乱れるとメンタルにも影響する

「脳と腸」「食事とメンタル」は関係があると言われています。誰と食事を食べるか、どのタイミングで食べるかによって、セロトニンをはじめ、様々なホルモンや消化酵素の分離量が変化し、自律神経を整えたり乱したりします。

コロナ禍の今年は、インフルエンザとの同時流行「ツインデミック」の流行も懸念されます。試合前や試験前といったストレスの多い状況の時ほど、食事時間や食事内容に注意し、自分のペースを乱さないようにすることが望まれます。食事から心も体も整えていきましょう。

【管理栄養士・今井久美】