先日、以下の内容のニュースを読んで驚いた方もいるでしょう。
都内のある保育園で、給食を食べた1~6歳の園児28人に、一時的に腕や顔に発疹などの症状が出た。きつねうどんのスープ(だしパック)から検出された化学物質「ヒスタミン」が原因のアレルギー様の食中毒と断定された。
だしパックの使用方法には、10分以上は煮出さないことと書かれていたものの、45分という長時間加熱したことが原因だといわれています。そのため、ヒスタミンが生成された量が多かったのではないかということです。
しかし実際は、煮出し時間が長かったことが原因かどうかは不明です。長期保存が可能な乾物は、常温保存ができるものが多いことから、食中毒とは無縁のように思われがちですが、保存方法や取り扱いによっては食中毒や食物アレルギーの原因になることもあるため、注意が必要です。
常温保存できるとは限らない
ここで、乾物の保存方法を確認していきましょう。乾物だからといって、常温で保存できるとは限りません。冷蔵保存、遮光が必要なもの(日光で変色、変質する)もあります。
湿気の多い時期や場所での保管はカビが生えやすく、健康障害を生じる恐れのある「カビ毒」もあります。乾燥材などを利用しましょう。また、冷蔵庫に保管しているから安心というわけでもありません。冷蔵温度帯でも増える菌もあり、冷凍保管の方が良いものもあります。
煮干しやかつお節といった魚には、ヒスチジンという必須アミノ酸が含まれていますが、保存方法が適切でないとヒスタミンに変わり、中毒を起こすことがあります。乾物だからといって安心せず、早めに使い切るように心がけましょう。
箸や衛生手袋を使い、必要量だけ取る
料理中に食材を取り出す時、家庭では素手のことが多いと思いますが、黄色ブドウ球菌など手の傷などに存在する菌もいます。また、他の物を触り、汚染された手によって、その時は使わない分の食材に菌が付着することもあります。
手で触ったきざみ海苔によるO-157の食中毒が発生した事例もあります。いくらきれいに洗った手であっても、食材は使う分だけ取り、使わず保存する分は触らないようにする、箸や衛生手袋などを使って食材を取り出すなどを心がけた方が良いでしょう。
加熱しても毒素は減らない
多くの食中毒菌は加熱によって減りますが、熱に強い菌もあります。今回の保育園のケースの原因物質、ヒスタミンや毒素は加熱では減りません。
「加熱すれば大丈夫」だと思っているなら、危険な考え方です。特に、体調の悪い時、子どもや高齢者は抵抗力が低いため、少量の毒素によっても食中毒やアレルギー反応がでる場合があります。慣習や思い込みで料理をすることが多いものですが、今一度、食材のパッケージを十分確認し、適切な方法で使用することが大切です。
【管理栄養士・今井久美】