新型コロナウイルス感染症は、今なお拡大の一途をたどり、重症患者数も連日最多を更新している。これまで、死亡に至る危険因子として高齢と慢性腎臓病が指摘されていたが、慶應大学病院などのチームによる解析で、新たに高尿酸血症ならびに痛風が関与していると発表された。

高リスクは高齢、慢性腎臓病だけではない

慶應義塾大学医学部内科学教室は、関連病院と構成する研究グループで2020年2月から6月19日まで、グループ内14施設で受け入れた新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の患者345人について、重症化または死亡と基礎疾患との関連について調べた。患者の年齢の中央値は54歳で、半数以上が男性。基礎疾患は高血圧が90人と最も多く、糖尿病48人、高尿酸血症28人と続いた。

高尿酸血症の方は入院前の段階から診断を受けていた、もしくは入院中に痛風発作を発症した人々。345人のうち重症化したのは112人で、解析したところ、重症化の危険因子として、意識障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、息切れ、高血圧、発熱、全身倦怠感、高齢の順で関与していることが分かった。死亡したのは24人で、危険因子としては、これまで報告されていた高齢、慢性腎臓病だけでなく、高尿酸血症・痛風も高リスクであることも分かった。

サイトカインの過剰分泌による多臓器不全に

一般に人が病原体に感染すると、免疫細胞が病原体と戦って体を守る。その際、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質が分泌されるが、コロナにおいてはサイトカインが過剰に分泌され、免疫が暴走し(サイトカインストームという)、肺をはじめ多臓器に炎症を起こし、死に至らしめる場合がある。

元々、高尿酸血症・痛風に疾患すると体内の炎症反応が強まりやすく、そういった方がコロナに感染すると、サイトカインストームによる炎症がさらに増幅され、死亡リスクが上昇すると考えられる。これらのことから、高尿酸血症・痛風がある方は、コロナに感染すると死亡リスクが高いことを認識し、同時に尿酸値コントロールを行うことがリスク予防になる可能性が高いと知って欲しいとしている。

もちろん、肥満や糖尿病、高血圧などもコロナ重症化の危険因子であることは厚生労働省から発表されている通りであり、基礎疾患のある人は引き続き、薬の適切な服用や通院、生活習慣の改善などを行うことが重要だ。

日本で初の市中感染の大規模な症例検討

これまで、日本で行われてきたコロナ患者の解析は、国立感染症研究所センターが実施した、2020年3月までのクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号あるいは海外での感染も含む症例を対象とするものだった。この解析においても、高尿酸血症・痛風が危険因子である可能性は指摘されていた。

慶應義塾大学病院などの研究グループで行った解析は、クルーズ船に関係しない市中感染の大規模な症例検討として、日本で初めての発表となった。2~6月という第1波における首都圏での感染状況を解析したものであり、日本での市中感染での重症化ならびに死亡リスクを初めて明らかにできた意義ある研究だとしている。

在宅時間が増えると高尿酸血症・痛風のリスク

コロナ感染予防のためにリモートワークなどで在宅時間が長くなり、生活習慣に乱れが生じると、高尿酸血症・痛風になる可能性が高まる。尿酸は通常、尿や便から排せつされてバランスが保たれているが、プリン体の多い食生活や排せつ機能の障害などにより、血中の尿酸量が多くなると高尿酸血症となる。

高尿酸血症によって引き起こされるものとして最も知られているのが痛風で、尿酸値が高い状態を放置すると、血液中の尿酸が関節内で結晶化し、炎症を起こして激しい痛みを伴う。また、腎臓では尿路結石や腎機能が起き、動脈硬化を進行させることでも知られている。

尿酸値上昇の原因として多いのがプリン体を含む食べ物の過剰摂取なので、暴飲暴食をしないこと。焼き肉、レバー、モツ、魚卵、あん肝といった高プリン体食品は避けることが推奨される。アルコールはビールだけでなく、どんな種類であっても、それ自体が尿酸値を上昇させるので適度な飲酒にとどめることが大切なようだ。年末年始の食事のとり方も、意識して欲しい。