「ファスティング」や「プチ断食」という言葉を見たり、耳にしたりする機会が増えてきましたね。興味のある方も多いと思います。
長時間食べない間欠的ファスティング
ファスティングとは「断食」を意味しますが、現在はやっているファスティングは、全く食べない「絶食」ではなく、酵素ドリンクなどを使用しながら固形の食事を断つ方法が主流です。減量効果だけでなく、デトックス効果や消化機能のリセット効果などが期待できるといわれています。
例えば、食事をしない時間を16時間設ける「16時間断食」は「間欠的ファスティング」と呼ばれ、16時間は固形物を摂らず、残りの8時間に固形物を含めた食事を摂るという方法です。10時間以上食事を摂らず空腹状態にすることで、体が古いタンパク質をリサイクルして新しいタンパク質に変える動きをし、代謝が上がり、痩せやすくなるそうです。
胃炎や腸炎などがある場合、消化管を休ませ、粘膜の修復のために絶食することは有効です。食べ過ぎや飲み過ぎで、消化管に負担をかける食べ方をしている大人は、時に断食するのも悪くありません。
長時間の飢餓状態によるデメリット
しかし、成長期の子どもや運動量の多いアスリートはどうでしょうか。
常にタンパク質やエネルギーが必要とされているため、空腹時間が長く、飢餓状態になることは好ましくありません。特に、成長期は成長不良の原因になります。アスリートも空腹のまま運動すると、脂肪が燃焼するだけでなく、大切な筋肉をエネルギーに使ってしまうことになります。
結局、食事(摂取エネルギー)は、エネルギーを使うタイミングで適度な量の栄養が体に入っていることが重要です。消費する予定もないのに、たくさん食べてしまったといったアンバランスが肥満を助長します。
痩せるには「摂取エネルギー<消費エネルギー」にする必要があるものの、飢餓状態が続くことでマイナスになることもあります。脂肪細胞から遊離脂肪酸が放出され、肝臓に集まりますが、このときに糖質もタンパク質も不足していると、遊離脂肪酸は肝臓で中性脂肪に変わり、「低栄養性脂肪肝」を発症することがあるのです。
減量は長いスパンで計画的に
ファスティングには賛否両論がありますが、少なくともジュニアアスリートは避けた方が良いでしょう。
審美系スポーツや体重制限のあるスポーツでは、成人アスリートでも体重コントロールが必要ですが、目先のことばかりを考えず、長いスパンでの減量を目標とし、減らした体重をオフ期などで増やさないようにすることの方が大切です。ストイックな食事制限は続けるのが大変ですし、リバウンドも生じます。何よりも、食べる楽しみを失ってしまっては寂しいですからね。
【管理栄養士・今井久美】