<五輪を楽しむキーワード(2)>
東京オリンピック(五輪)で先陣を切って開幕するサッカー競技。他競技と同様に、聞き慣れないカタカナ表記の専門用語が増えている。さらにサッカーを楽しく観戦するために知っておくといい用語は何か? テレビ解説や選手の話で耳にするワードから担当記者が選んだ用語20選を紹介します。【取材・構成=岡崎悠利】
あ行
(1)アーリークロス
相手陣内に入ったエリアの両サイドからゴール前に送る、ロングキックによるクロスのこと。通常のクロスは相手陣内深くまで攻め込んでから送られるものを指す。アーリーは「早い」の意味。
(2)アウトスイング
ゴールから遠ざかっていく球筋になるキック。たとえば右CKをインフロントキックで蹴る場合、右足で蹴ればアウトスイングとなる。逆に左足で蹴るとゴールに向かっていく軌道になる。これはインスイングと呼ばれる。
(3)アジリティ
敏しょう性のこと。単純に走るのが速いというよりも、方向転換の際の反応速度のような瞬発力を指すことが多い。特に1対1の局面などで要求される。U-24日本代表候補は久保建英、三笘薫、三好康児などアジリティ◎が勢ぞろい。
(4)アタッキングサード
左右にゴールを置いたピッチを均等に縦に3分割したときに、相手ゴールに近い3分の1のスペースを指す言葉。ゴールに近いエリアであるため、ここでの精度の高さが得点に直結する。
(5)ウノゼロ
1-0で勝利すること。一般的に親しまれているカードゲーム「UNO」と同じウノで、イタリア語で1の意味。イタリア代表は鉄壁の守備「カテナチオ」を伝統とし、1-0での勝利を美学としてきた。同国代表のスタイルはすでに守備重視から変わっているが、なぜか今になって日本でよく使われている。
(6)オーバーエージ(OA)
五輪など国際大会に出場する選手の中で、年齢制限の上限よりも年上の選手のこと。特に五輪のサッカーといえば必ず出てくる。16年リオデジャネイロ五輪では開催国ブラジルがスター選手のネイマールをOAで招集して優勝した。
(7)オフサイドディレイ
副審はオフサイドかどうか疑わしいと判断した場合はそのままプレーを続行させ、プレーが止まった段階で旗を上げることができる。この行為がオフサイドディレイ。誤審によって得点機が失われることを防ぐことが狙い。実際に試合で目にすると、はじめは戸惑いがち。
(8)オフ・ザ・ボール
ボールを持っていないことを指す。「オフ・ザ・ボールの動きがいい」といった使われ方。主に攻撃陣の選手に求められる能力で、クロスに合わせてDFのマークを外す、仕掛ける走りをしてDFを引きつけて味方のパスコースを作るといった動きも含まれる。関連ワードはデコイ。
か行
(9)くさび
前線にいる選手に縦パスを出すこと。用例は「くさびを入れる」など。受けた選手がDFを背負いながら味方の上がりを待ったり、空いたところにパスを出したりと、攻撃の局面で重要なプレー。日本でのくさびの受け役としてはFW大迫勇也が最強。ぜひオーバーエージで出場してほしい。
(10)クリーンシート
試合を無失点で終えること。直訳すると「白紙の用紙」になる。試合の記録用紙に記入をする際に無失点なら何も書く必要がなく白紙の状態になることから、無失点の試合を表す言葉になった。最近のJリーグでは名古屋が8試合連続のクリーンシートでJ1記録を更新した。
さ行
(11)絞る
守備をする時のポジショニングの1つ。サイドにいる選手が中央に寄ったり、全体として一方のサイドに寄ったりすることで1つのエリアを集中的に守ることをいう。反対に中央からサイドへ展開していくことを「開く」という。
(12)スパ(SPA)
反則の基準の1つで、相手の大きなチャンスとなる攻撃を妨害すること。「Stopping a Promising Attack」の頭文字をとってスパと呼ばれる。これに当てはまると判断された場合は警告が出されることが多い。関連ワードはドグソ(後述)。
た行
(13)ダイアゴナル
斜めの方向を指す。主に「ダイアゴナルラン」など、斜めに走ってゴール前に入っていく動きなどに使われる。FWなど攻撃の選手がよく行う。前出のオフ・ザ・ボールの動きの基本。間違えて「ナイアナゴル」と言いがち。
(14)デコイ
もとは、狩猟に使われるおとりのこと。サッカーでは、DFをひきつけるためのおとりの動きを意味する。これもオフ・ザ・ボールの動きの1つ。積極的にデコイの役割を果たすというよりは、味方がボールを出してくれなかったから結果的におとりになった、ということもあるらしい。
(15)ドグソ
日本人からするとなんとなく品がなさそうな響き。「Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity」の略=DOGSO(ドグソ)で、「決定的な得点機会の阻止」という意味の反則基準のこと。レッドカードが提示されることが多い。
は行
(16)バイタルエリア
ざっくり言うとペナルティーエリア周辺の場所で、DFラインとボランチの間くらいのエリア。ここに効果的なボールが入ると守備側はDFラインが崩れがちになることから、得点につなげるための重要な攻略ポイント。
(17)フェアプレーポイント
1次リーグ突破のための順位決定基準の1つ。勝ち点、得失点差、総得点、直接対決での勝ち点、得失点差、総得点、それでも数字が同じだった場合に減点方式で用いられる。警告で1点、警告2度の退場で3点、一発退場が4点、警告からの一発退場が5点で、減点が少ない方が上位。これも同じなら抽せん。
(18)フリック
英語で「軽くはじく」の意味。サッカーでは受けたパスを素早く方向転換させるプレーのことを指す。「きたパスに軽く触れてボールの方向を変える」くらいの感覚。スマホでも、画面をタップしてから任意の方向にすばやくはじくようにして入力することを「フリック入力」と言う。
ま行
(19)ミラーゲーム
同じ陣形を採用するチーム同士が対戦すること。各ポジションでマークする相手がはっきりするため、1対1の局面を迎えやすい。
ら行
(20)リトリート
「退却、撤退」の意味。守備において、相手にボールを奪われた際に素早く自陣に戻り、態勢を整えること。これに対して奪われたらすぐにプレッシャーをかけ、相手ゴールに近い位置で奪い返そうとする守備をフォアチェックという。
(2021年4月28日、ニッカンスポーツ・コム掲載)