九州大学と北海道情報大学は、柑橘由来ポリフェノールが緑茶の抗肥満作用を増強することをヒト介入試験で明らかにしたと発表した。九大大学院農学研究院の立花宏文主幹教授、北海道情報大の西平順学長、トヨタ自動車の共同研究チームによるもので、コロナ禍で肥満者の増加が懸念されている中、緑茶とミカンなどの柑橘類の同時摂取が肥満予防の有効な手段の1つになると見ている。

緑茶と柑橘類を一緒にとることで抗肥満作用が強まる
緑茶と柑橘類を一緒にとることで抗肥満作用が強まる

緑茶だけでは高濃度のカテキンの摂取が必要

これまでに緑茶に抗肥満作用があることは知られていたが、効果を出すには、機能性表示食品のような高濃度の緑茶カテキンを含む緑茶を摂取する必要があった。

一方で、立花主幹教授らはこれまでに、ミカンなどの柑橘由来のポリフェノールが緑茶カテキンの機能を向上させることを細胞実験や動物実験で明らかにしており、これらの併用摂取が健康機能に与える影響を調べるために、2020年6月~10月にかけて、ヒトを対象とした試験を実施した。30~75歳の健康な日本人男女60名を対象に介入試験を12週間行い、緑茶と柑橘由来ポリフェノールを組み合わせて摂取することで、従来よりも少ない量の緑茶カテキンで抗肥満作用が期待できることが分かった。

急須で入れる緑茶3~4杯、ミカン3~4個

少ない量の緑茶カテキンというのは、立花主管教授によると「急須で入れるお茶で3~4杯」程度。また、合わせてとる柑橘由来ポリフェノールは「ミカンに換算すると3~4個」を適量としている。摂るタイミングについては「カテキンの吸収効率の考えると食前の方が良いが、今回の試験では特に摂取の時期は気にしていなくて良い」という。

つまり、お茶とミカンなどの柑橘類を一緒にとることで、肥満防止に役立つということになる。毎日3~4杯のお茶とミカン3~4個。いわゆる「こたつでミカン」の昭和の冬の風物詩は、肥満防止に役立っていたことになる。

日本人の健康長寿の理由は、多彩な食素材から構成される日本食が寄与していると考えられており、これまで特徴的な食品成分個々の生体調節機能に関する研究は行われてきた。しかし、多種多様な食品因子を同時に摂取することで期待される生体調節機能の「組み合わせ効果」については、まだよく分かっていないという。立花主幹教授は「健康・長寿大国の礎の一端を支える日本食に含まれる、成分間の機能的な相互作用を解明していきたいと考えています」とコメントしている。

<セミナー募集中>
コロナ禍で太らないための食事と運動
静岡の銘茶「天竜茶」3代目が教えるお茶のおいしい入れ方