ほんのり甘く、料理に使ってもドリンクやヨーグルトに混ぜてもおいしいはちみつは、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノールなどの成分がバランスよく含まれており、高い健康効果が期待される食材です。消化吸収力を高め、胃痛や腹痛を緩和する作用のほか、体を潤す作用にも優れているので、空気が乾燥する冬場は積極的に取り入れたい食材でもあります。
しかし、はちみつのラベルなどを見ると「赤ちゃんに与えないように」という注意書きが書いてあるのをご存じの方も多いでしょう。実は、1歳未満の乳児にとってはリスクが高い食品なのです。
乳児ボツリヌス症にかかる恐れが
なぜ赤ちゃんにとって、はちみつは危険な食品なのでしょうか。1歳未満の乳児がはちみつを食べると、乳児ボツリヌス症にかかることがあるのです。
ボツリヌス菌は、土壌中などに広く存在している細菌です。大人の腸内では、ボツリヌス菌が食品などを介して口から体内に入ったとしても他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、基本的には何も起こりません。
しかし、乳児はまだ腸内環境が整っていないため、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出し、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります。
通常の加熱や調理では死滅しない
ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。一般的に、はちみつは包装前に加熱処理を行わないため、ボツリヌス菌が混入していることがあります。そのため1歳未満の乳児には、はちみつやはちみつ入りの飲料、お菓子などの食品を与えないようにすることが大切なのです。
厚生労働省では「はちみつを与えるのは1歳を過ぎてから」としてHPで注意喚起しています。ただ、1歳を過ぎたとしても少量のはちみつを与えてみて、具合が悪くなさそうなら少しずつ増やしていくのが賢明です。
また厚生労働省によると、乳児ボツリヌス症は、国内では、保健所が食中毒として報告した事例は1986年以降3例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例は1999年以降16例。欧米でも発生しており、米国では毎年100 例以上の発生報告があるそうです。乳児ボツリヌス症の発生原因は、食品としてはちみつが指摘されていますが、はちみつを食べていない例(国内では井戸水)も報告されています。