慢性的な便秘改善がなぜ必要かということと、注目の発酵性食物繊維については、「便秘になると年間約122万円も損?注目の発酵性食物繊維「小麦ふすま」で正しい腸活を」の記事で説明しました。

腸内環境は運動とも関係

腸内環境を良くするには運動も関係があると、大妻女子大学家政学部の青江誠一郎教授は話します。食生活を含めた生活習慣を整え、さらにウォーキングなどの適度な運動をすることで酪酸産生菌は増加します。

一方で、過激なスポーツは酪酸産生菌を減少させ、免疫機能に影響を及ぼす可能性があるといいます。つまり、日頃から高強度の運動を行うアスリートは、一般人以上に腸内環境を意識した食生活を送る必要があるということです。

アスリートにおける腸の役割3点

消化器専門医として最新医学に精通する京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授も「運動パフォーマンと腸内環境には関係がある」と言います。内藤教授は「アスリートにおける腸の役割」として次の3点を掲げ、それぞれ説明しました。

アスリートにおける腸の役割

①回復力・パフォーマンス
②タンパク質の同化・異化
③睡眠・概日リズム

①回復力・パフォーマンス

アスリートは、従来の5大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル)に加え、天然由来食物繊維(ルミナコイド)や機能性食品成分(ファイトケミカル)をとることが重要。

提供資料から
提供資料から

激しい運動によって酸化ストレスが生じるが、サケなどに多く含まれるアスタキサンチンなどの抗酸化物質をとることで、遅発性筋損傷を予防できる。腸粘膜の酸化ストレスを軽減することで、スポーツパフォーマンスが向上する可能性があるとも指摘した。

②タンパク質の同化・異化

高強度トレーニングによって慢性的に疲労を抱えているアスリートは、高齢者と同様、筋タンパク質の合成反応(同化反応)が減弱している可能性がある。体の組織を壊してエネルギー源を得なければいけない状態にあり、単純にアミノ酸やタンパク質を補給するだけでは不十分で、腸内環境を整えることがまずは必要だ。そのためには、食物繊維の摂取が重要である。

提供資料から
提供資料から

食物繊維が不足すると、骨格筋が萎縮して握力が低下するが、発酵性食物繊維を摂取することで改善する。発酵性食物繊維としては、アラビノキシランの含有量が全粒粉の約4倍もある小麦ブランを推奨する。

提供資料から
提供資料から

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の発症予防を目的とした1日あたりの食物繊維目標量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっていますが、内藤教授はアスリートのみならず、一般の人も「成人は25g以上が目標」と強調しました。量だけでなく質として、発酵性食物繊維の摂取をすすめています。

③睡眠・概⽇リズム

アスリートがパフォーマンスを上げるためには、体内時計のリセットが毎日必要で、すっきりとした⽬覚めには朝⾷が重要だ。

発酵性食物繊維が豊富な小麦ブランを原料にしたオールブラン
発酵性食物繊維が豊富な小麦ブランを原料にしたオールブラン

適量の脂肪、炭⽔化物、タンパク質で構成される「⾼炭⽔化物」の朝⾷をとると、覚醒レベルが⾼い。一方で「⾼タンパク」の朝⾷は、覚醒レベルが低くなる。さらに、糖分を多く摂ると覚醒レベルが下がるため、発酵性食物繊維をとり、糖質を制限した⾼炭⽔化物⾷が推奨される。

京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授
京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授

内藤教授は、「アスリートには睡眠障害の人が多い。パフォーマンスを上げたいなら睡眠を見直す必要がある」とも指摘しました。アスリートの睡眠管理については、睡眠の量以上に「質」を重視する必要があり、パーソナルヘルスレコード(PHR)を活用した睡眠管理が有効だといいます。

これらの報告からも分かるように、アスリートのパフォーマンス向上には腸内環境の整備が重要で、発酵性食物繊維の摂取や適切な睡眠管理が必要です。腸内環境に不安のある方は、まずは生活習慣を見直してみましょう。