<イップスって何?(8)>
スローイングの違和感を克服するため、何度も練習を重ねる。こうした努力がイップスを生み出してしまうのでしょうか?
トレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)は「そうです。正しい練習ならいいですが、部分的な修正はやり過ぎると悪化を招いてしまいます」と言います。ちょっとした違和感を直すため、例えば腕、肘、手首など、細かい部分を修正します。すると、かえって本人の意図とは違う動きになってしまう。そういう可能性があるそうです。
「もちろん個人差はありますが、イップスに悩む多くの選手は手先に過剰な意識を向けています。手先に意識がいく分、重心…いわば体の中心への感覚が薄れてしまいます」。松尾氏の指導は、そこにポイントがあります。「例えば、建物の柱が傾いて全体が揺らいでいるのに、外壁のひび割れだけ直しても仕方ありませんよね。そういうことです」。
送球に悩んでいた大学生のA君に対しても、体の軸を修正する指導をしていました。誤作動を起こしている腕については、何も言いませんでした。「腕の動きは結果であって原因ではない」「体幹がしっかりしていれば、腕は自然と機能的に動くよ」。そういった声がけをしていました。
さらに松尾氏が考案した器具を使って、体の軸を修正していきます。【飯島智則】