<イップスって何?(9)>
トレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)は、イップス克服のために「重心線プレート」という器具を考案しました。靴に装着し、裏についている球体を使って歩きます。靴の裏にゴルフボールをつけて歩くようなものです。もちろん不安定になります。
「人間は不安定な状態を作ると、安定しようとバランスを取ります」。松尾氏は、そう効果を説明してくれました。イップスに悩む選手の多くは、手先に意識が集中してしまい、重心が崩れてしまう。松尾氏は、それが誤作動の原因と考えています。重心の修正こそが、イップス克服への近道というわけです。
私も試しに重心線プレートを使ってみました。竹馬に乗っているような感覚です。最初は不安定でしたが、次第にうまくバランスが取れるようになりました。3分ほど歩いてから外すと、確かに体の重心が定まって、姿勢がよくなった感覚がありました。
「イップスのきっかけはメンタルかもしれません。暴投できない重圧から重心を崩し、本来の動きができなくなる。それはあるでしょう。ただ、メンタルで改善はしません。精神論や根性論では治りません。本来の自然な動きを取り戻す必要があります。私は動きがメンタルを作ると思っています。スムーズに動ければ安心してきます」。そう言う松尾氏も、イップス経験者でした。【飯島智則】