<イップスって何?(10)>
イップス克服を指導するトレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)は、自身も送球に悩みました。西日本短大付時代はスリークオーターの投手で、ある時サイドスローにフォームを変えました。
「初日はよかった。でも、翌日になったらスッポリ投げ方を忘れてしまった。直接バックネットに当てるなど、捕手が捕れない球ばかりになってしまいました」。試行錯誤しても改善せず、今度はアンダースローにしました。しかし、体は思い通りに動いてくれませんでした。
「投げる方の手が地面に当たっちゃうんですよ。痛いんです。本当に痛い。当てなければいいと思うでしょう? でも、そう思って投げても当たってしまうんです」。青学大、明治生命(現・明治安田生命)と野球のエリートコースを歩みました。社会人では外野手に転向します。しかし、現役を引退するまで、スローイングに心地よさは戻りませんでした。
マネジャーに転向したある日、仲間の打撃を見てハッとしました。「大会でスコアをつけていた時、ある選手の安定感あるスイングが目に留まりました」。体の安定…つまり重心にヒントを得ました。試合後に仲間にキャッチボールを頼み、投げてみました。すると、現役時代に感じられなかった心地よさが戻っていたそうです。これが現在の指導の基本になっています。【飯島智則】